研究概要 |
IgA腎症には家族集積性が認められることから、その発症機序には遺伝背景が関与すると考えられている。私たちは家族性IgA腎症を対象としてエクソーム解析を行い、IgA腎症の発症に関与する遺伝子変異の同定を試みた。 腎生検でIgA腎症と診断された複数の症例を含む28家系を対象とした。中規模の3家系(N_001、N_025、T_001)については、SNP Array 6.0を用いてSNPタイピングを行い、全ゲノム領域の連鎖解析を行った。また、家系内の罹患者および非罹患者を対象としてエクソーム解析を行った。次世代シークエンサーで得られた配列情報からフィルタリング(アレル頻度が0.3~0.7、1000 genome DB での頻度が1%以下、アミノ酸が非同義置換となる)を行い、IgA腎症の発症に関連する変異を選別した。日本人エクソームDBのHGVDにおける変異の頻度と比較した。 連鎖解析を行った3家系のエクソーム解析では、共通する候補遺伝子は認められなかった。しかし、N_025家系ではEEA1遺伝子が候補遺伝子と考えられ、さらに28家系で7家系に複数の変異が検出された。HGVDと比較し、家族性IgA腎症ではEEA1変異の頻度が有意に多く認められた(P = 0.015, OR 2.9)。EEA1遺伝子は家族性IgA腎症の発症に関与する感受性遺伝子の一つであるとと考えられた。N_001、T_001家系についても候補遺伝子の解析を行っている。
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