シナプス小胞膜上に発現する分子であるSV2Bが糸球体上皮細胞 (ポドサイト)スリット膜のバリア機能調節に関与していることを報告してきた。平成24年度は①SV2Bノックアウトマウスを用いてSV2Bのスリット膜関連分子の発現調節機構の解析、②ネフローゼモデルを用いたin vivoでの検討でスリット膜分子の発現調節機構の解析を行い、p38 MAPK阻害薬がスリット膜分子群の発現変化を抑制し、バリア機能を維持させることを報告した。 平成25年度は、スリット膜などで形成される糸球体濾過障壁バリア機能の調節機構をさらに解析するため、単離糸球体を用いたin vitroの系の確立し、この系を用いた解析を行った。Savinらの方法を基により定量的なAssay 系の確立を目指した。既報に準拠して単離糸球体を調整し維持培地中のアルブミン濃度を生理的濃度以下にした際の糸球体への水分の流入の程度を指標として糸球体濾過障壁の蛋白透過性保持の程度を検出する系を確立した。この系を用いた解析で、puromycinにより誘導された蛋白透過性の変化がカルシニューリン阻害薬であるタクロリムスで抑制されることを確認した。この結果はリンパ球などの糸球体外因子の関与なしで、タクロリムスが糸球体に対する直接作用を有することを示した重要な結果である。
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