研究課題/領域番号 |
23591188
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
小杉 智規 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院助教 (90584681)
|
研究分担者 |
丸山 彰一 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (10362253)
佐藤 和一 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (90508920)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | CD147 / ATP産生 / Glucose代謝 / インスリン抵抗性 / Lupus腎炎 / 補体C3活性 / 抗ds-DNA抗体 / 免疫複合体 |
研究概要 |
1 . 進行性糖尿病性腎症におけるCD147の関与を血管内皮障害について解明するため、CD147ヘテロ マウスと膵・細胞特異的カルモジュリン過剰発現マウス(CaMTg)を交配し、ヒト糖尿病性腎症類似病変を有するモデルを作成開始した。同時にIn vitroにてCD147があらためてATP産生とGlucose代謝に関与し、新たにインスリン抵抗性についても関与する可能性を認めた。これらをふまえた上で、糸球体病変、血管内皮障害を誘導するモデルマウスから組織採取する8カ月間までに血液・尿サンプルを経時的に採取を行っている。CaMTgのCD147発現は血中・尿中共に実験開始より増加傾向を認めている。併せて、Tail cuff法により血圧を測定している。2.インスリン分泌機構に対するCD147の関与を解明するために膵β細胞を単離し、本実験に使用する。そのためCD147欠損マウス(KO)と野生型マウス両者から単離を開始し、その純度をFlow cytometry法にて確認・改善している。3.CD147KOマウスと野生型マウスの両者にPristanを経腹膜的に投与し、Lupus腎炎モデルの作製を開始した(観察期間は6カ月から9カ月の長期にわたるため24年度の予定であったが、本年度に前倒しした)。1.と同様に実験観察期間中に2・4・6カ月で血液・尿の採取を順次おこなっており、当初の想定とは異なり、野生型よりCD147KOにて尿蛋白の有意な増加を認め、4か月でPreliminaryに採取した組織検体では、その変化に合致してCD147KOに糸球体に免疫複合体と考えられるDepositの沈着が多数であった。しかし、補体C3活性には両群間で差は認めるものの抗ds-DNA抗体では有意な差を認めなかった。現在、腎臓だけではなく免疫複合体の生成・消化過程の検索のため脾臓・赤血球を含めた検索を行っている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画書では24年度より開始する予定であったLupus腎炎に関与するCD147の役割を本年度より開始しており、当初とは異なる結果であったが、実験結果も順調に得ており、その成因についても満足できるものを得ている。糖尿病モデルマウスを使用した実験やそれを補完するIn vitroの実験も計画通りに当初の予測通りの結果を得ている。
|
今後の研究の推進方策 |
研究課題は、今後も今年度同様に糖尿病およびLupus腎炎に関する実験課題を並行して推進していく予定である。現在、特に問題は生じていないが、CaMTgマウスとCD147 Heteroマウスとの交配数が充分に得られない事も考えられる。その際には早急に親マウスの交配数を増やし、実験に必要なマウス数を維持する対策を現在から取っている。
|
次年度の研究費の使用計画 |
1. インスリン分泌機構におけるCD147の関与(In vitroより) ATP感受性Kチャンネルの閉鎖による膜脱分極が誘因となる細胞外インスリン分泌機構の解明のため膵臓におけるCD147の機能解析を行う。まず、野生型およびCD147 KO miceより膵β細胞を単離し、膵β細胞におけるミトコンドリアのATP産生能に関与するのか、もしくはβ細胞膜上のKATP Channel自身に関与するのかを検証する。更にCD147の膵β細胞でのApoptosisに対する関与についてCaspaseやBcl familyの推移から検討し、併せて。Oxidative stress下におけるインスリン分泌能を解析する予定である。2. Lupus腎炎におけるCD147の関与。CD147はMatrix metalloproteinaseやVascular endothelial growth factorを介して慢性関節リウマチなどの自己免疫性疾患の増悪に関与する。今回、自己免疫疾患の中でもLupus腎炎においてCD147の関与と治療標的になりうるかを検証する。既に、CD147 KO miceにpristanを経腹膜的に投与し、Lupus腎炎モデルを作製した。今後、経時的に2, 4, 6ヶ月と腎機能(血清クレアチニン値, BUN, 尿タンパク定量)と抗ds-DNA抗体、補体価の測定を行い、更に、糸球体病変、尿細管間質病変、微小血管病変の変化を血清学的および病理学的に検討する。また、分子生物学的手法および免疫組織染色法を使い、炎症系細胞、CD4細胞、CD8細胞、T lymphocyte、B細胞の組織浸潤、線維化関連マーカー、血管内障害関連因子を評価し、作用起序の解明をおこなう予定である。
|