研究課題/領域番号 |
23591191
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
向山 政志 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (40270558)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | メタボリック症候群 / ナトリウム利尿ペプチド / アルドステロン / 糖尿病性腎症 / toll-like receptor 4 |
研究概要 |
メタボリック症候群(MetS)関連腎症における内分泌因子の意義を検討し、以下の研究成果を得た。1.アルドステロン負荷モデルにおけるNa利尿ペプチド(NP)系の意義の検討MetS関連腎症では局所でのアルドステロンシグナル活性化が示唆されるが、一方NPファミリーは強力なRAA系抑制作用を示す。腎臓でのNP系とRAA系の拮抗関係を調べるため、ANP・BNP受容体(GC-A)欠損マウス(GC-A-KO)にアルドステロンを負荷し腎臓の表現型を野生型と比較したところ、GC-A-KOでのみ血圧とは独立してネフローゼレベルの蛋白尿と著しいpodocyte傷害を来たすことを見出した。その機序をgene arrayや薬物投与を用いて解析し、GC-A-KO+アルドステロン群で局所でのMAPキナーゼや酸化ストレスが活性化すること、抗MR薬やARB、抗酸化剤でネフローゼやこれらの病態が明らかに改善することを認め、RAA系活性化の際に腎局所にて内因性NP系が防御的役割を示すこと、およびその機序にMAPキナーゼと酸化ストレス抑制が関与することが示された(J Am Soc Nephrol 2012)。2.糖尿病・高脂血症合併モデルにおけるS100A8-TLR4系の意義の検討糖尿病の際に脂質異常合併が腎症増悪に及ぼす役割とその機序を検討するために、streptozotocin誘発糖尿病マウスモデルに高脂肪食を負荷し、腎症への影響を調べたところ、蛋白尿や糸球体組織像悪化とともに、自然免疫に関与するtoll-like receptor(TLR)4およびその内因性リガンドのS100A8が糸球体で著増することを見出した。さらに、TLR4-KOマウスでそれらが著しく軽快することを明らかにし、腎症進展機序にTLR4系が関与することが示された(Diabetologia 2012)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に示した内容に関する成果が出てきており、初年度に計画した部分に関しては学会発表(米国腎臓学会、国際腎臓学会、米国糖尿病学会、日本心血管内分泌代謝学会、日本腎臓学会、日本内分泌学会、他)、および論文発表(Journal of the American Society of Nephrology, Diabetologia)の段階にきている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、アルドステロンシグナルの主にポドサイト傷害を中心とする腎障害機序、およびNa利尿ペプチド系の腎保護に及ぼす作用点を明らかにするために、とくにMAPキナーゼ阻害剤を用いた検討を行う。さらに、p38 MAPキナーゼの遺伝子改変動物を用いた検討も進めていく。脂質異常による糖尿病性腎症悪化のメカニズムに関しては、toll-like receptor 4(TLR4)の腎臓内局在、およびTLR4の内因性リガンドとしてのS100A8の発現解析について、疾患モデルマウス、および臨床サンプルを用いて検討する。この系におけるマクロファージの意義についても解析を進めていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
動物実験では、機序についてさらに解析していくとともに、遺伝子改変動物を用いた新たなモデルの導入、さらにp38 MAPキナーゼ阻害剤などによる治療的介入について新知見を得ていく。これらの実験を進めるために、動物飼育関連、生化学実験関連試薬、細胞培養実験関連試薬などの購入・維持費用に当てる。また、臨床サンプルの解析についても、検査委託費などに当てる予定である。
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