研究課題/領域番号 |
23591191
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
向山 政志 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (40270558)
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キーワード | メタボリック症候群 / ナトリウム利尿ペプチド / アルドステロン / 糖尿病性腎症 / 肥満関連腎症 / toll-like receptor 4 |
研究概要 |
メタボリック症候群(MetS)関連腎症(糖尿病性腎症、肥満関連腎症、腎硬化症)における内分泌因子の意義を検討し、以下の研究成果を得た。 1.アルドステロン負荷モデルにおけるNa利尿ペプチド(NP)系の意義の検討 MetS関連腎症では局所でのアルドステロンシグナル活性化が示唆されるが、NPファミリー(ANP,BNP,CNP)はこの系に強力な拮抗作用を示す。これまで、ANP・BNP受容体(GC-A)欠損マウスにアルドステロン負荷を行うと、著しい蛋白尿とpodocyte傷害を来たすことを示した(J Am Socd Nephrol 2012)。さらに、この病態におけるMAPキナーゼの関与を明らかにするため、p38MAPK阻害薬(FR167653)を経口投与すると、明らかな蛋白尿の改善(-90%)と腎組織軽減を認め、その機序にp53抑制が関与する可能性を示した。 2.糖尿病・脂質異常症合併モデル及びヒト腎疾患における自然炎症の意義の検討 糖尿病・脂質異常症合併マウスでは、糖尿病性腎症の増悪、及び腎糸球体において自然免疫に関与するmyeloid-related protein 8(MRP8)とその受容体toll-like receptor 4(TLR4)の相乗的発現亢進を認め、TLR4欠損マウスでは、蛋白尿、マクロファージ浸潤や炎症・基質関連遺伝子亢進がいずれも軽減した(Diabetologia 2012)。また、種々の原因による腎疾患症例において、腎組織MRP8発現は糖尿病性腎症で特に亢進を認め、その発現レベルは腎予後予測の極めて優れた指標であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に示した内容に関する成果が出てきており、学会発表(米国腎臓学会、日本高血圧学会、日本肥満学会、他)、および論文発表を行うことができた。さらに論文発表の準備を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、アルドステロンとナトリウム利尿ペプチド系とのpodocyteにおける相互関係の機序をさらに詳細に検討する。特に、p53を含むp38MAPキナーゼの下流のシグナルの意義を明らかにする。 糖尿病・脂質異常症合併モデルでは、自然炎症とレニン・アンジオテンシン系との関連、マクロファージの関与を明らかにする。 ヒト腎疾患、特に糖尿病性腎症における自然炎症の意義については、さらに症例を増やし、臨床データとの関連、予後予測における意義を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
動物実験では、腎組織解析のための試薬購入費に充てる。臨床サンプルについても、検査委託費の一部に充てる予定である。
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