研究概要 |
メタボリック症候群(MetS)関連腎症(糖尿病性腎症、肥満関連腎症、腎硬化症)における内分泌因子の意義を検討し、以下の研究成果を得た。 1.アルドステロン(Aldo)負荷腎障害モデルにおけるNa利尿ペプチド(NP)系の意義の検討:MetS関連腎症では局所でのAldoンシグナル活性化が示唆されるが、一方NPファミリー(ANP,BNP,CNP)は強力なレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系拮抗作用を示す。ANP・BNP受容体(GC-A)欠損マウスに高塩食-Aldo負荷を行うと、著しい蛋白尿(260倍)とpodocyte傷害を来すことを示した(J Am Soc Nephrol 2012)。この病態におけるMAPキナーゼの関与を明らかにするため、p38MAPK阻害薬(FR167653)を経口投与すると、明らかな蛋白尿改善(-90%)とpodocyte保護を認めた。さらに、podocyte特異的GC-A欠損マウスに同様の負荷を行うと、10倍に増加した蛋白尿がp38阻害薬で同様に軽減し、podocyteのMAPKシグナルが重要と考えられた。 2.糖尿病・脂質異常症合併モデル及びヒト腎疾患における自然炎症の意義の検討:糖尿病・脂質異常症合併マウス(STZ/高脂肪食負荷マウス)では、糖尿病性腎症の明らかな増悪および腎組織内自然免疫系(myeloid-related protein 8/Toll-like receptor 4系)の異常活性化を認め、TLR4欠損マウスで同様の負荷を行うと腎障害の著しい改善を認めた(Diabetologia 2012, Clin Exp Nephrol 2014)。さらに、種々の原因による腎疾患症例において腎組織MRP8発現を検討したところ、糖尿病性腎症組織で特に亢進を認め、その発現レベルは腎予後の優れた指標であることを示した(PLoS One 2014)。
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