研究課題/領域番号 |
23591192
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
飯島 一誠 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00240854)
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研究分担者 |
長田 道夫 筑波大学, 医学医療系, 教授 (10192238)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 腎尿路奇形 / 原因遺伝子 |
研究概要 |
先天性腎尿路奇形(CAKUT)は500人に1人程度の高頻度で生じる先天奇形であり、小児期腎不全の原因として最も頻度が高く、その発症機序の解明や診断・治療法の開発が強く望まれている。 CAKUTの発症機序として、尿管芽と後腎組織の発生・分化に関わる遺伝子異常が重要と考えられている。 CAKUTの原因遺伝子として、PAX2, EYA1, SIX1, SALL1, HNF1Bなどの遺伝子が同定されたが、これらの遺伝子変異が検出されるのは15%程度にすぎず、大半のCAKUT症例では依然としてその原因遺伝子は不明である。 我々は、ゲノムワイドCGH アレイを用いて種々のCAKUT症例の解析を行ったところ、特に腎尿路奇形以外の奇形や異常を合併する症候性CAKUTで、その原因と思われる遺伝子コピー数の変化が比較的高頻度で検出されることが明らかになった。我々は、これまでに、腎機能障害を伴う低異形成腎、感音性難聴、両側副耳等BOR症候群の範疇に入る症例で、SALL1遺伝子を含む16q12.1-q12.2領域の約5.3 Mbのヘテロの欠失を検出した。また、母も同様の症状を有する腎機能障害を伴う低異形成腎、感音性難聴、耳瘻孔を認めるBOR症候群患児においてELN遺伝子及びLIMK1遺伝子を含む7q11領域の約1Mbの重複を検出した。上記の欠失や重複によると思われるBOR症候群の報告は、これまでなされておらず、BOR症候群の新たな原因である可能性が高く、CAKUTの発症機序を考える上で非常に貴重な症例であり、今後さらに同様の症例の集積をはかる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画書申請時に同定していたCAKUT候補遺伝子の多くは、その後の検討でCAKUTの原因とは考えにくいデータを得たため、対象を症候性CAKUTも含む症例にまで広げてCAKUT新規原因遺伝子の同定を行うこととした。その結果、現在のところ、新規原因遺伝子の同定には至っていないが、CNV arrayを用いた解析で、BOR症候群の範疇に属する症例にMbレベルの欠失や重複を見いだしており、その領域内にCAKUT新規遺伝子が含まれる可能性が高いと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後も症候性CAKUTを中心として、CNV arrayによる欠失や重複の検出を継続し、症例の集積をはかるとともに、欠失領域、重複領域に含まれる遺伝子の発現・機能プロファイルをGene Note Databaseなどの種々のデータベースを利用して解析する。また、それらの遺伝子の胎生期腎での発現の有無をヒト胎児cDNAライブラリーを用いて検討し、腎での発現が認められるものについては、ヒトあるいはマウスの胎児腎を対象として、RT-PCRやin situ hybridizationにより、その発現時期や発現パターンを検討する。上記の方法にてCAKUT新規候補遺伝子の可能性が高いと考えられた遺伝子を対象として、ジーンターゲテイング法にてノックアウトマウスあるいはノックインマウスを作成し、腎尿路の形態異常や機能異常の有無を検討する。このようにして、CAKUT新規遺伝子が同定されたならば、その遺伝子も含めた包括的なCAKUT遺伝子診断システムを開発・確立する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費は、1)CNV array、2)ヒト胎児cDNA等の試薬及び情報収集のための旅費等に用いる予定である。
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