研究課題
先天性腎尿路奇形(CAKUT)は500人に1人程度の高頻度で生じる先天奇形であり、小児期腎不全の原因として最も頻度が高く、その発症機序の解明や診断・治療法の開発が強く望まれている。 CAKUTの発症機序として、尿管芽と後腎組織の発生・分化に関わる遺伝子異常が重要と考えられている。 CAKUTの原因遺伝子として、PAX2, EYA1, SIX1, SALL1, HNF1Bなどの遺伝子が同定されたが、これらの遺伝子変異が検出されるのは15%程度にすぎず、大半のCAKUT症例では依然としてその原因遺伝子は不明である。我々は、上記遺伝子等の既知のCAKUT原因遺伝子シークエンスにて変異を検出できなかった症例に対して、ゲノムワイドCGH アレイを用いて解析を行ったところ、特に腎尿路奇形以外の奇形や異常を合併する症候性CAKUTで、その原因と思われる遺伝子コピー数の変化が比較的高頻度で検出された。そのうちの1例である小頭症と発育障害をともなう総排泄腔遺残の女児例では、1q21.1領域に約1.8Mbの欠失を検出した。これまで1q21.1欠失症候群でCAKUTが発症しうることは報告されていたが、総排泄腔遺残の報告はなく、本症例が初めてであると考えられる。なお、この症例において、どの遺伝子が具体的に総排泄腔遺残に関与しているかは不明であるが、欠失範囲内に存在するCHD1Lは近年新規CAKUT原因遺伝子候補として報告されており、CHD1Lの検索を進めることで新たな本邦のCAKUT原因遺伝子の分布を明らかにしていきたい。
2: おおむね順調に進展している
対象を症候性CAKUTにまで広げ、主としてゲノムワイドCGHアレイを用いて解析したところ、比較的高頻度で遺伝しコピー数の変化が検出できた。なかでも、総排腔遺残症例で1q21.1欠失症候群を検出したことは特筆すべきことであり、欠失領域に含まれるCHD1L遺伝子と総排腔遺残との関連を追及していきたい。
総排腔遺残と1q21.1欠失症候群及びCHD1L遺伝子との関連を追及するために、全国より総排腔遺残症例を集積し、アレイCGH及びCHD1L遺伝子変異検索を行う予定である。また、CHD1Lノックアウトマウスの情報収集やヒト胎児cDNAを用いた、胎生期のCHD1Lの臓器発現パターンなどを検討する。これと平行して、症候性CAKUTの症例集積を行い、アレイCGHによる欠失、重複の検出を継続し、新たな原因遺伝子同定につなげたい。
1)アレイCGH、2)ヒト胎児cDNA等の試薬、3)情報収集のための旅費、4)研究成果出版費用等に用いる予定である。
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