研究課題/領域番号 |
23591193
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
前島 洋平 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (10343287)
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キーワード | 慢性腎臓病 / 血管新生 / 線維化 / 炎症 |
研究概要 |
本邦にて慢性腎臓病 (CKD) 患者は1,330万人と推計され,CKDから末期腎不全に至り透析療法を施行される患者数は年々増加し30万人超となっている。このような背景から、CKDについての臨床及び基礎研究による進展機序の解明と新規治療法の開発は,医療経済的にも重要な課題である。CKDの主要な原疾患は、糖尿病性腎症、腎硬化症、慢性腎炎等であるが、末期腎不全に至る際に糸球体硬化・尿細管間質病変(間質線維化)が共通して観察される Vasohibin-1 (VASH-1) は東北大学 佐藤教授らにより同定された血管新生抑制因子で、血管内皮細胞をVEGF-A等で刺激した際に発現が増加する。本研究では,内因性VASH-1発現変化が腎糸球体・尿細管間質病変の進展に関与する、そしてその発現調節は腎障害進展を制御し得る、との仮説の下に以下の検討を行った。 VASH-1 ノックアウトマウスにおける尿細管間質障害モデル惹起による腎障害変化の検討を行った。常法により、VASH-1へテロKOマウス, 野生型マウスに片側尿管結紮(UUO)モデル、葉酸腎症モデルを作成した。UUOモデルでは、VASH-1 +/-群にて野生型マウス群に比して、間質単球浸潤、間質線維化、ケモカイン発現増加の増悪を認めた。葉酸腎症モデルでは、VASH-1 +/-群にて野生型マウス群に比して、腎機能障害、間質単球浸潤、尿細管上皮細胞障害の増悪を認めた。さらに、培養腎線維芽細胞を用いた検討で、VASH-1 siRA導入により、間質型コラーゲン、TGF-β1発現増加ならびにpSmad3レベルの増加が観察された。 以上の検討結果より、内在性VASH-1は腎線維化ならびに急性腎障害を制御しうる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は、VASH-1欠損マウスを用いた腎疾患モデルの作成並びに基礎的検討を予定していたが、UUOモデルならびに葉酸腎症モデルについて予定通りに検討が進んでいる状況である。あまた、培養腎線維芽細胞を用いたin vitroの検討も進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究計画として、平成24年度の疾患モデルを用いた検討の詳細な解析をさらに進めていく予定である。また、VASH-1のホモログであるVASH-2は血管新生促進に作用する可能性が最近報告されている。VASH-2欠損マウスに腎疾患モデルを惹起することによる、腎障害進展に対する内在性VASH-2の機能的役割に関しての検討を、糖尿病モデル、UUOモデル等を用いて検討する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
VASH-1欠損マウスを用いた糖尿病性腎症モデル、UUOモデル、葉酸腎症モデルでの検討を継続し、内因性VASH-1による腎保護作用についてその 分子メカニズムの解明を行う。培養メサンギウム細胞、線維芽細胞を用いた検討も合わせて実施する。また、VASH-2欠損マウスを用いて糖尿病性腎症マウス、UUOマウスモデルを作成し、内在性VASH-2による腎障害時における機能的役割について検討を行う。 さらに、ヒト腎生検等を用いた検討についても継続的に実施し、実地臨床においてのVASH-1、VASH-2の腎バイオマーカーとしての有用性についても検 討を行う。
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