当初の研究目的として、1)腎尿細管脱分化細胞の同定、2)尿細管細胞死におけるDNA修復の重要性の解明、を目的として実験計画を立案した。これらにおいて、尿細管の細胞増殖、再生に関しての基礎的研究は重要であり、共同研究者の寺田と共に研究を行っていた。 当初の研究計画では、細胞周期を蛍光標識した蛋白によりin vivoでモニターできるFUCCIマウスを使用し、急性腎障害後の細胞周期 および細胞増殖の解析を行う予定だった。しかし当研究室における人員不足があり、マウスを使用したin vivoによる急性腎障害後の尿細管再生(脱分化、細胞周期進展、再構築)の解析が難しい現状があり、本年は細胞系での実験系構築を目指した。 具体的には、腎尿細管細胞、および尿細管と同様に幹細胞(未分化状態の細胞)において増殖し、その後に分化すると考えられる骨格筋細胞をモデルとして、細胞周期マーカーとしてFUCCI vectorを細胞内に導入して、蛍光標識により細胞周期が確認できる細胞株を樹立し、薬剤による障害を与えることにより、細胞周期の進展を確認することを第一の目標とした。骨格筋細胞株(分化誘導が可能)をコントロールとして使用することにより、分化と細胞増殖の過程を区別できるのではないかと考え、細胞株樹立を目指している。現在のところ残念ながら細胞株の樹立は成功していない。樹立後、細胞傷害後の細胞周期の進展を解析すると共に、分化および脱分化の過程をin vitroの系で再現することを目標としている。
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