研究課題
Xanthine oxidoreductase(XOR)はプリン体の最終代謝産物である尿酸の産生に関与している。培養脂肪細胞の実験からは、PPARγの内因性リガンド活性を制御することにより、脂肪細胞分化の制御に関与することが示されている。今回我々はXOR遺伝子改変マウスを用い、XORの白色脂肪細胞を介したメタボリックシンドロームとの関係を検討した。XORヘテロマウスはワイルドタイプと比較し、2ヶ月齢では耐糖能、血圧、血清脂質などに差は認めかったが、脂肪細胞分化に関連するC/EBPβ、PPARγ、FABP4の発現は亢進していた。4ヶ月齢では体重差は認めなかったが耐糖能検査で有意な高血糖、血圧上昇を示し、精巣上体周囲白色脂肪組織の重量も増加し、組織学的には炎症所見を認めた。また、18ヶ月齢ではXORヘテロマウスで有意な体重増加を認め、空腹時血糖も高値であった。2ヶ月齢マウスの白色脂肪組織より分離した血管間質分画に脂肪細胞への分化誘導を行うと、XORヘテロマウス由来の血管間質分画では脂肪合成の主要調節因子であるPPARγ、脂肪合成マーカーであるFABP4およびC/EBPαの有意な発現亢進を認め、分化誘導中の過酸化水素ならびにスーパーオキシド産生の増加を認めた。これらの結果は、XORヘテロマウス由来の血管間質分画細胞では脂肪細胞分化が亢進していることを示している。加えて、XORヘテロマウス由来の血管間質分画細胞では、分化誘導刺激によるC/EBPβの発現変化はなかったが、発現レベルはワイルドタイプより高かった。今回の研究では、マウスXOR遺伝子の発現抑制により脂肪蓄積が促進され、活性酸素の増加、マクロファージの浸潤およびインスリン抵抗性を介して、加齢に伴い肥満を呈した。XOR遺伝子はC/EBPβの発現を介して脂質代謝を制御している可能性が考えられた。
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Arteriosclerosis, Thrombosis, and Vascular Biology
巻: 34 ページ: 44-51