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2012 年度 実施状況報告書

慢性腎臓病の認知能低下におけるカルボニルストレスの病態と治療に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 23591196
研究機関福島県立医科大学

研究代表者

中山 昌明  福島県立医科大学, 医学部, 教授 (60217940)

研究分担者 旭 浩一  福島県立医科大学, 医学部, 准教授 (60274966)
キーワードメチルグリオキサール / 慢性腎臓病 / 認知機能
研究概要

酸化ストレス性の尿毒素であるメチルグリオキサール(MGO)が認知能障害、腎機能障害に関与するかを明らかにすることを目的に、本研究を計画した。基礎的検討では、前年度に引き続き、MGO負荷モデルラットの作成を行い、行動・認知機能、さらに脳組織・腎組織の影響を検討した。SDラットを対象にして、0.5% MGOを含有する飲用水を24週間投与、コントロール群と比較した。この実験モデルでは、MGO投与群の最終的なMGO血中濃度は、コントロール群の約3倍を呈しており、この値はヒトのレベルで中等度腎機能低下の体内環境に相当していた。行動認知機能の検査として、8方向放射状迷路試験を用いて、①空間参照記憶誤反応、②空間作業記憶誤反応、③空間参照・作業記憶誤反応に関して経時的に検査を実施した。初期(ラット成長期)においてはコントロール群の成績が優れる傾向が観察されたが、経時的に観察したところ、MGO群の成績がコントロール群より有意に優れるという結果が確認された。抗酸化系のNrf2発現を検討したが両群に明らかな違いは認められず、機能の違いの原因に関しては最終的な結論は得られていない。一方、腎臓においては、経時的な尿蛋白量、血中クレアチニン値に両群に違いはなかったものの、MGO群では尿中isoprostaneの増加、腎グルタチオンペルオキシダーゼの増加が認められ酸化ストレス刺激が惹起された可能性が示された。また、腎組織においてはMGO群の一部で間質炎症・線維化、糸球体癒着病変の増加が観察された。一方で、興味深いことに、MGO群では尿中・血中アンジオテンシノーゲン発現が有意に抑制されていた。以上の結果からは、尿毒素MGOは、腎障害に対しては増悪因子となっているものの、認知機能に関しては悪化因子にはなっていない可能性が示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

当初の研究計画は以下の3項目を主目的としていた。(1)酸化ストレス惹起性の尿毒素であるMGO負荷による認知機能異常モデルラットを確立する。(2)臨床例での認知機能とMGOレベルとの関連を検討する。(3)抗酸化療法として分子状水素を含有した水素水血液透析により、認知機能に影響が出るかを検討する。
現時点では、研究計画の達成状況は主に(1)にとどまっている。その大きな理由として挙げられるのは、まず、認知機能MGO負荷モデルの作成に関して当初の予定を超えて難渋したことである。適切なMGO負荷量を決定するために実験を繰り返す必要があったこと、さらに、MGOの経時的な影響を確認するためにラットの飼育期間を延長して長期間観察する必要が生じたためである。もう一つは、今回計画したMGO負荷モデルのデータが当初の予想とは全く逆の結果が出たことである。この原因を検討する必要があり、当初の計画(1)を延長せざるを得なくなった。
なお、(3)の臨床研究に関してはすでに実施準備が整い、一部実施している。

今後の研究の推進方策

基礎研究:MGO負荷は少なくとも腎機能が正常なモデルにおいては、認知機能を上昇させていた。本モデルは尿毒素負荷モデルではあるものの、腎機能低下モデルではない。この違いによる影響を明らかにすることで、尿毒素MGOの影響を正確に評価することができると考えている。今後、腎機能が低下したラットでのMGO負荷データも含めて、脳海馬と腎組織との病理組織・生化学的検討をすすめ、それらの違いの有無を確認した上で、MGOの病因物質としての役割をモデル動物の観点から明らかにする。
臨床研究:臨床検討として、慢性腎臓病患者を対象に、水素水透析による認知機能レベルに関する予備的検討を進める。

次年度の研究費の使用計画

研究成果をまとめ、論文化するため計画通り使用。

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公開日: 2014-07-24  

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