研究課題/領域番号 |
23591197
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
杉山 紀之 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90381954)
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キーワード | 嚢胞腎 / ネフロン癆 |
研究概要 |
本研究目的は嚢胞腎の発生機序解明のために、尿細管上皮細胞の一次繊毛が管構造に与える影響、実際には嚢胞腎で乱れが生じることが報告されている尿細管上皮細胞の細胞分裂方向の決定機構の解明であった。しかしながら、昨年度までに Wnt/PCP 経路の活性化は認められず、また Dvl2 の局在に変化は認められなかった。そこで、本年度は継続して Dvl3 の局在変化の検討に加え、他の極性因子の局在変化について検討を行うために、尿細管上皮細胞の3次元培養系の構築を行った。 現在までのところ、Dvl3 の局在は嚢胞腎と正常腎において違いは認められていない。しかしながら、腎臓の組織切片では拡張時期の変動をリアルタイムで観察することはできない。そこで、拡張期を観察するために嚢胞腎および正常腎の尿細管上皮細胞株を用いた3次元培養系の確率を検討した。さらに、嚢胞腎尿細管上皮細胞株のみ明瞭に拡大した嚢胞を効率良く作り出すことに成功し、この嚢胞は内腔に向けて一次繊毛が生えていること、tight junctionが形成されているなど in vivo の上皮形態を持つことを証明した。 現在、この実験系を用いていくつかの細胞極性因子の局在を観察しており、当初の目的であった尿細管上皮細胞の細胞分裂方向決定に関わる因子が同定されることが期待される。 また、尿細管拡張の分子機序の解明のために繊毛局在蛋白であり、嚢胞腎形成責任遺伝子の一つである inv に結合する因子の探索を行っている。現在はまだ途中段階であるが、新たな因子が同定されることが期待される。 以上の2点を介して、嚢胞腎における細胞極性因子の動態および新たな inv 結合因子の同定が解明されることにより、嚢胞腎発生機序が明らかになるだけでなく、新規治療表的因子の同定につながる可能性が高い。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実験計画においてはin vivo での平面極性因子の動態を解明することになっていたが、顕微鏡の解像度、抗体の特異性などの問題により尿細管上皮細胞内での極性因子の局在を正確に示すことが困難であった。そのため、in vivo での尿細管上皮細胞での平面極性因子の局在解析の研究は遅延している。残念なことに、高解像度の顕微鏡の構築や抗体の作製は当予算内で行うことができず、この計画の変更を行った。 そこで、来年度行う予定になっていた培養系を先んじて構築して解析を行っており、嚢胞腎を極性因子の動態で解析し、その発生機序を明らかにする本研究目的達成のためには順調に進行している。
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今後の研究の推進方策 |
まずは3次元培養系を用いて、嚢胞における平面極性の局在を免疫組織化学染色法により解析し、正常腎と嚢胞腎で変動がある因子の探索を最重要課題として押し進める。その中で変動のあった因子についてはGFP遺伝子と融合したコンストラクトを作製し、嚢胞拡張に伴った局在動態を経時的に観察する。これらの研究計画により、嚢胞発生への細胞極性因子の役割を明らかにすることが期待される。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費は大きく分けて二つの用途に分けられる。 (1)三次元培養系で用いる消耗品:マトリックス、フォレスコリンなどの添加剤、培地 (2)極性因子の抗体 これらは次年度の研究費の主な使用用途となる。 また、これらの結果を報告する海外雑誌への投稿料の必要である。
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