MPO-ANCA関連血管炎にみられる糸球体腎炎においてMPO陽性細胞が糸球体毛細血管内皮に接着しその局所および近傍にMPOを放出することにより内皮障害を引き起こす。本研究においては平成23年度までに、好中球が放出する好中球細胞外トラップ (NETs)の糸球体腎炎発症に果たす役割を解析するためMPO-ANCA関連腎炎と他の病型の腎炎との糸球体の病理組織学的比較検討を行い、MPO-ANCA陽性の糸球体腎炎では壊死性糸球体腎炎を呈し、壊死部付近にMPO陽性細胞の浸潤、糸球体毛細血管壁にMPOの局在を認め、MPO陽性部位に一致してDNA染色も陽性となることを見出した。平成24年度はANCA関連血管炎患者血清中の様々な好中球細胞質抗原に対する抗体が、in vitroにおける好中球によるNETs産生に与える影響を調べるため、好中球をPMAとともに培養し、同時に各種好中球細胞質抗原に対する抗体を培養液中に加えた。各種抗体によりNETs産生が亢進すること、好中球によるNETs産生に単なるNETosisとfiber状に放出するタイプのNETsとがあることを見出した。平成25年度では、AAV患者好中球を用いて健常人と比べFiberタイプのNETsの異常産生がみられ、それらは治療による病勢の改善とともに減少し、病勢の悪化とともに増加することを見出だした。同時に糸球体内皮細胞との共培養により、このFiber状のNETsが内皮細胞を直接障害していることも示した。
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