研究課題/領域番号 |
23591202
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
宮崎 陽一 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (60266690)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | podocyte / MMP / VEGF / Diabetic nephropathy |
研究概要 |
平成23年度は、Tet-on systemによって発現誘導される糸球体上皮細胞特異的Noggin transgenic mouseの作成を行った。Noggin cDNAをTet O promoterの下流に連結。Expression cassetteを作成しDNAを精製。フェニックスバイオ株式会社に受託し計150個の受精卵にinjection施行。計80匹の出生マウスのtail DNAを解析したところ、10匹のmouseのゲノムDNAにtransgeneが組み込まれている事を確認、 Tet O-Noggin miceとした。このresponder transgenic mouseそれぞれを、ミシガン大学のDr JB Koppから供与を受けた確立したactivator transgenic lineであるPodocine-rtTA miceと交配。dual transgenic mouseを作成し、Doxycycline投与下、その異常形質の解析を行った。出生直後に腎臓組織を解析したところ、糸球体血管係蹄の虚脱、糸球体嚢胞の形成および尿細管発達障害というphenotypeを安定して呈する2つ独立したlineを樹立することに成功した。現在、当該マウスについて胎生期をさかのぼり解析しprimary defectを同定する作業中であり、また同時に、成体においてはじめてDoxycycline投与を行い、成体における糸球体上皮BMPの詳細な機能を明らかにする目的で、その糸球体変化や尿細管変化を免疫染色やin situ hybridizationにより解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成23年度の最も重要な目標であった、誘導可能podocyte特異的Noggin発現マウスであるdual transgenic mouseのlineが確立できたため。
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今後の研究の推進方策 |
本年度作成した誘導可能糸球体上皮細胞特異的Noggin発現マウスを用いて、胎生期のstageをさらにさかのぼって解析することにより、腎臓に認められる異常形質に関して、primary defectを同定する。野生型と比較し、ほとんど組織学的差異を見いだせない時期やごく軽度の差異しか認められない時期を選択、RNAおよび蛋白を抽出し、angiogenic growth factorやangiogenesis inhibitorに関して網羅的にPCR-arrayやproteome解析を行い、介在する候補分子を検討する。特にBMPは様々局面においてmatrix metalloproteinase (MMP)の発現、活性を調節すること、またMMPの調節は血管新生や血管安定化に必須であることが知られており、本研究においてもMMPに注目し、定量的、定性的あるいは組織分布などの評価を行う。同時に、成体腎における糸球体上皮細胞BMPの生理作用を検討する事にも着手。前年度までの研究から12カ月令のNephrin-Nogginにおいては、顕著なメサンギウム領域の拡大を伴う、糖尿病性腎症びまん性病変に類似した変化が一部のマウスに観察されたが、これが成体腎におけるBMPの阻害に原因が求められるか否かは不明である。したがって、生後8週程度の上記transgenic mouseにDoxycyclin を投与。定期的に腎組織を一部採取し、腎組織を電顕、免疫染色を含め経時的に観察。糸球体BMPの生理作用を考える。特に上記、胎生期の腎臓におけるBMPの生理作用が成体においても関与している可能性があり、その機序に注目し検討を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度においては、解析実験が主となり、マウスの維持飼育費が約300,000円、組織解析関連費が約200,000円、生化学的解析費が約400,000円程度と予想された。 本年度作成したdual transgenic mouseのphenotype解析を詳細に行う必要があるため、RNA array および抗体arrayにかかわる費用が多くなると予想され、生化学的解析費に上記の費用がかかると試算した。また新たな抗体の購入を含む組織解析関連試薬に対する費用も多くなると予想されるが、前年度までにその多くを既に入手、準備済なので上記の経費と判断した。
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