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2011 年度 実施状況報告書

ネフロン発生分子機構に基づく腎障害発症機序の解明と新規治療標的分子の探索

研究課題

研究課題/領域番号 23591203
研究機関東京慈恵会医科大学

研究代表者

宇都宮 保典  東京慈恵会医科大学, 医学部, 准教授 (70231181)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2013-03-31
キーワード糸球体数 / 糸球体密度 / 肥満関連腎症 / 慢性腎臓病
研究概要

腎臓病症例における糸球体数の臨床的意義について1.剖検腎における糸球体密度の検討腎疾患のない剖検腎において糸球体密度を計測し、他の因子との関連について検討した.対象は明らかな腎疾患の既往がない、eGFR60ml/min/1.73m2以上の53剖検例。計測された糸球体数は平均約50個で、糸球体密度は1.5~5.4/m2と個人間で約3.6倍、糸球体容積は0.9×106~7.2×106μm3と個人間で約8倍のばらつきが観察された.糸球体密度は糸球体容積(r=-0.349)と負の相関を示したが、年齢、eGFR、BMI、腎重量、全節性硬化率とは関連しなかった.糸球体容積はBMI、腎重量とも相関したが、重回帰分析においては糸球体密度とBMIのみが糸球体容積を規定する独立因子であった.以上より、正常腎において糸球体密度には潜在的個体差があり、BMIとともに糸球体容積を規定する重要な因子と考えられた.2.肥満関連腎症(ORG)における糸球体密度の検討ORG症例における腎組織の定量的解析を行った.対象は生検時eGFR30以上、BMI30以上かつ他の腎疾患が否定された20例.組織学的検討では球状硬化16±16%、間質障害18±14%、FSGSを6例(30%)に認めた.糸球体平均断面積(MGA)はORG 31.4±5.0X103μm2でIgAN18.3±4.3X103μm2及びMN23.7±4.1X103μm2と比べ著しく高値であったが、球状硬化糸球体を含むGDはORG 2.0±0.7 /mm2でIgAN3.9±1.6 /mm2及びMN3.8±1.4 /mm2と比べ著しく低値であった.結語:ORGの発症には従来から指摘されている肥満による代謝性因子や血管作動性因子の変化のみならず、ORG症例が潜在的に有する組織学的特徴(糸球体低密度)が関与する可能性が考えられた.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度は、腎臓病症例における糸球体数の臨床的意義について検討し、慢性腎臓病の発症と進展には個人の糸球体数(密度)が重要な役割を果たしていることを明らかにすることができた.とくに、今回われわれは肥満関連腎症の発症には従来から指摘されている肥満による代謝性因子や血管作動性因子の変化のみならず、肥満関連腎症症例が潜在的に有する組織学的特徴(糸球体低密度)が関与する可能性を世界で始め報告した。本研究成果は日本腎臓学会および米国腎臓学会に発表し、さらに一部を国際学会誌にも投稿し受理された(Clin J Am Soc Nehprol, in press).このような観点からも本年度の研究計画内容はおおむね順調に進展しているものと判断される.

今後の研究の推進方策

今後も、さらに症例数を増やすとともに糖尿病腎症や高血圧性腎症などさまざまな病態を基盤とした慢性腎臓病症例における個人の糸球体数と臨床所見とを比較検討し、慢性腎臓病における糸球体密度の重要性について検討する.とくに、個人の糸球体数を決定する因子を明らかにするためにも本年度得られた研究成果をもとにエピジェネテイクス機構に注目し基礎的研究も展開していく予定である.また、残金39,092円は計画的に使用していたうえでの端数であり、来年度の研究経費の一部として使用する予定である。

次年度の研究費の使用計画

平成24年度以降も慢性腎臓病患者における臨床研究を継続するとともに、その成果をもとに糸球体発生過程におけるエピジェネテイクス機構の解明に関する基礎研究を展開する.a)腎組織内におけるDNAのメチル化とヒストン脱アセチル化の同定各症例の腎組織を用い、DNAメチル基転移酵素1(Dnmt1)、p53、Bcl-2、Baxの遺伝子発現量を解析し、p53遺伝子のメチル化減少にともなうアポトーシス関連遺伝子の発現制御異常と個人のネフロン数との関連を検討する.さらに、腎組織内(糸球体および尿細管上皮細胞、血管内皮細胞)におけるヒストン修復(ヒストン脱アセチル化)と腎組織障害程度、炎症細胞浸潤や間質繊維化程度との関係をhistone deacetylase(HDAC)抗体を用いた免疫組織やWestern blot法にて解析する.b)慢性腎臓病患者におけるmicroRNA (miRNA)プロファイルの解析慢性腎臓病患者の末梢血リンパ球あるいは腎組織よりtotal RNAを抽出し(Amnion Inc、USA)、独自のoligonucleotideマイクロアレイ法にて、miRNAの発現プロファイルを分析し、腎障害の発症や個人のネフロン数と関連するmiRNAを探索する.さらに、絞り込んだmiRNAに関しては定量PCR法を用いて、個々の発現解析を行い腎障害の発症進展への関与を検討する.

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2012 2011 その他

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] Low glomerular density with glomerulomegaly in obesity-related glomerulopathy.2012

    • 著者名/発表者名
      Tsuboi N, Utsunomiya Y, Kanzaki G, Koike K, Ikegami M, Kawamura T, Hosoya T
    • 雑誌名

      Clin J Am Soc Nephrol

      巻: 7 ページ: in press

    • DOI

      10.2215/CJN.07270711

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Functional development of a transplanted embryonic kidney: effect of tranaplantation site.2012

    • 著者名/発表者名
      Mastumoto K, Yokoo T, Yokote S, Utsunomiya Y, Ohashi T, Hosoya T.
    • 雑誌名

      J Nephrol

      巻: 25 ページ: 50-55

    • DOI

      10.5301/JN.2011.7426

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Glomerular density-associated changes in clinicopathological features of minimal change nephrotic syndrome in adults.2011

    • 著者名/発表者名
      Koike K, Tsuboi N, Utsunomiya Y, Kawamura T, Hosoya T.
    • 雑誌名

      Am J Nephrol

      巻: 34 ページ: 542-548

    • DOI

      10.1159/000334360

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Discordant clinicopathological features in monozygotic twins with IgA nephropathy.2011

    • 著者名/発表者名
      Tsuboi N, Kawamura T, Okonogi H, Ishii T, Utsunomiya Y, Hosoya T.
    • 雑誌名

      Nephrol Dial Transplant

      巻: 26 ページ: 4146-4148

    • DOI

      10.1093/ndt/gfr519

    • 査読あり
  • [学会発表] 低糸球体密度と糸球体腫大は肥満関連糸球体症の腎組織学的特徴である.

    • 著者名/発表者名
      坪井伸夫、宇都宮保典ら.
    • 学会等名
      第54回日本腎臓学会学術総会
    • 発表場所
      横浜
    • 年月日
      平成23年6月16日
  • [学会発表] 剖検腎における糸球体密度の検討

    • 著者名/発表者名
      神崎 剛、宇都宮保典ら.
    • 学会等名
      第54回日本腎臓学会学術総会
    • 発表場所
      横浜
    • 年月日
      平成23年6月15日
  • [学会発表] RA系を標的とした糸球体腎炎治療の新戦略

    • 著者名/発表者名
      宇都宮保典、川村哲也、細谷龍男
    • 学会等名
      第41回日本腎臓学会東部学術大会(招待講演)
    • 発表場所
      東京
    • 年月日
      平成23年10月15日

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公開日: 2013-07-10   更新日: 2013-09-11  

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