研究課題/領域番号 |
23591204
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研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
土谷 健 東京女子医科大学, 医学部, 准教授 (00246472)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 生理活性 / 長寿命化 / トランスレーションリサーチ / マイクロアレイ / 老化 |
研究概要 |
老化因子として注目されたKlotho蛋白は、その腎での発現がリン利尿ホルモンの受容体としての働きをすることが明らかにされた。本研究では、Klothoのリン代謝ならびにその潜在的な生理活性に注目し、腎疾患におけるKlothoの病態生理を明らかにし、治療に応用する標的分子として検討することが目的である。1)外因因子で、Klotho発現に影響を与えうる因子の検討: Klotho蛋白が腎障害時に好ましい働きをすることは明らかであり、その発現をupregulateすることができる因子を検討した。造血因子エリスロポエチンはKlotho mRNAを誘導することが判明し、特にheat shock protein 70を介した組織保護、抗酸化作用を発揮することが明らかにされた。2)Klothoの関連シグナル、抗線維化作用に関しての検討:ラット腎線維芽細胞(NRK49F Cell)をrecombinant Klotho proteinで処理し、alpha-SMA, E-cadherin, TIMP1, TIMP3 PAI1発現をそれぞれreal-time quantitative PCRを用いて測定。KlothoとTGFbは相互の発現に抑制的に働くcross-talkがあることが明らかにされ、内容はAm J Physiol Renal Physiol誌に掲載予定となった。3)リン輸送体ノックアウトマウスの候補モデルを検討した。機能的ノックアウトにはsiRNAを使用することになった。4)血中Klothoレベル測定法の開発:商業的に免疫生物会社(IBL)よりヒトの血中レベルの測定キットが提供されているが、このアッセイを用いて、ヒトおよびマウスでのKlothoの血中レベルの測定を行った。その結果と組織での蛋白発現をWestern blottingにより対比している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はKlotho蛋白の抗線維化作用についての分子生物学的機序の解明を進めることができた。次年度も継続して細胞内シグナルを検討していく予定である。腎のリン輸送体とKlothoの関わりについては、本年度、そのノックアウトマウスが取得できずに、この企画の進展が遅れた。食事中のリンは主に小腸粘膜のリン輸送担体(Npt2b)を介して吸収されるので、理論的には、Npt2bを抑制すればリン吸収が抑制され、Klotho欠損マウスの症状やCKDの進行および合併症の発生が抑制されると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
Klotho蛋白の抗線維化作用についての分子生物学的機序の解明を進めることができたが、今後も継続して細胞内シグナルを検討していく予定である。リン輸送とKlothoとのかかわりについては、当初の計画通り輸送体の遺伝子改変動物で検討するが、動物の取得に時間がかかる場合は、機能的改変をsiRNAにより実験を行う。血中Klothoレベル測定は引き続きeyzyme assayのデータの検証を続けつつ、当院に設置されているSELDI-TOF MASを用いた検討にはいる。血中Klothoレベル測定法の開発については、いまだに血中レベルの測定が容易でないことは、Klotho蛋白の抗原性に起因するとされている。今回、本研究施設のTOF MS装置を用いて測定を試みる。商業的に免疫生物会社(IBL)よりヒトの血中レベルの測定キットが提供されているが、このアッセイ結果との比較を行いながら確認することができる。Klotho蛋白の同定には、粒子に付着した抗Klotho抗体を用いる。SELDI-TOF MASを用いる(当共同研究施設内設置)。
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次年度の研究費の使用計画 |
初年度は遺伝子改変動物(マウス)の購入費用を予算に計上していたが、適当なモデルが該当せず、その費用を今年度以降に使用する予定とした。Klotho欠損マウス、Npt2b欠損マウス、およびNpt2b阻害状態(ここではsiRNA)を用いて、Klotho欠損マウスのNpt2b遺伝子を破壊することで(具体的にはKlotho -/-マウスとNpt2b -/-マウスとの掛け合わせ)、高リン血症、動脈硬化、骨粗鬆症、短命などの症状が改善するか検討する。この研究費を合わせて、モデル動物の購入費、siRNAの合成費用、および細胞内シグナル検討のための培養細胞、各分子生物学的試薬の費用に予算を充当している。細胞培養の維持費用に相当する額がかかり、またsiRNAの合成費用にも相当の支出が必要となる。
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