研究課題/領域番号 |
23591209
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研究機関 | 川崎医科大学 |
研究代表者 |
駒井 則夫 川崎医科大学, 医学部, 准教授 (40368626)
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研究分担者 |
柏原 直樹 川崎医科大学, 医学部, 教授 (10233701)
佐藤 稔 川崎医科大学, 医学部, 講師 (70449891)
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キーワード | 慢性腎臓病 / アルブミン尿 / 内皮障害 / 一酸化窒素 / 酸化ストレス |
研究概要 |
慢性腎臓病CKDでは、微量のアルブミン尿が心血管病(Cardiovascular Disease:CVD)発症と強く連関している。CVD発症の早期病態は血管内皮機能障害であり、CKDとCVDの連関機序、共通基盤病態として内皮(機能)生涯の関与が有力視されている。CKD進展・CVD合併阻止のための新規治療法立案に必要な理論基盤を確立することを目的として本研究を遂行している。 これまでの検討で、アルブミン尿と糸球体内皮細胞の機能異常、特にeNOS uncouplingが重要な役割を果たしており、さらにeNOS uncouplingには補酵素BH4の減少が関与することを解明した。そこで本年度はBH4産生の律速酵素であるGTPCH-1活性・発現調節の分子機構の解明に取り組んだ。GTPCH-1はeNOS機能発現に必須であり、内皮機能調節において中心的役割を果たしている。GTPCH-1はproteasome依存性経路により分解調節されているが、糖尿病腎組織において減少していることを見いだした。AMP-activated protein kinase (AMPK) はproteasome抑制活性を有しており、AMPK活性化はGTPCH-1の分解抑制を介してGTPCH-1発現を維持することを明らかにした。MetforminはLKB1(Peutz-Jegher syndrome tumor-suppressor遺伝子産物)依存性にAMPKをリン酸化・活性化する。糖尿病モデル(Akita,STZ)にmetforminを投与したところ、AMPK活性化を介したGTPCH-1発現亢進による腎障害進展の抑制効果があることを明らかにした。また培養細胞(HUVEC等)を用いて、高糖濃度下でのAMPK活性変化、GTPCH1活性変化、metforminの効果を解析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
慢性腎臓病CKDでは、ごく微量のアルブミン尿が心血管病発症と強く連関している。CVD発症の早期病態は血管内皮機能障害であり、CKDとCVDの連関機序、共通基盤病態として内皮障害の関与が有力視されてきた。しかしながら糸球体内皮細胞は有窓性であるが故に、その役割については疑問視されてきた。1)各種CKDモデルにおける糸球体内皮の機能的・形態的変化を解析し、2)アルブミン等のmacromoleculeの透過性制御における糸球体内皮細胞の役割、糸球体ECDよるアルブミン尿出現の可能性、3)糸球体ECD、特にeNOS uncouplingの分子機序の解析、4)アルブミン尿がCVDと連関する分子機序、以上を解明しCKDの治療法立案に資することを目的に設定し本研究を遂行してきた、 従来の研究技術上の隘路は、生体内で腎微小血流、透過性変化を解析する技術の不在であった。2光子(two-photon)励起方式レ-ザ-顕微鏡を利用し、各種分子量の蛍光標識probeを用いラット、マウスの腎内微小血流、透過性変化を直接可視化するin vivo imaging法を確立することができた。さらに腎組織において活性酸素種(ROS)生成とNOを同時に直接可視化検出する方法(in situ 可視化法)を確立することもできた。両方法を組み合わせることで、これまで不可能であった腎臓病における糸球体内皮細胞の病態形成における役割を解析することが可能となった。 これらの独創的な新規技術を駆使して、CKD進展、及びCKDと心血管病との連関に血管内皮機能障害が関与することを明らかにしてきた。研究成果は、関連分野の一流国際に発表すると同時に国内外の学術集会で発表してきた。共同研究の打診も少なくない。 以上の様に、研究の各段階で克服すべき課題を解決しつつ成果を上げ、順調に推移してきたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
ここまでの研究で腎糸球体内皮障害が腎臓病の進展と脳卒中、虚血性心疾患などの心血管病合併の連関機序に関与することを明らかにしてきた。今後は内皮機能改善を介した腎臓病治療の可能性を探求し、臨床研究に橋渡しできる知見を集積したい。ます、内皮機能改善作用が臨床的に示されている各種薬剤(ARB,レニン阻害薬、PPAR-γagonist, statin)について、糸球体内皮改善作用、病態改善作用(特にアルブミン尿減少作用)を検討する。一連の研究で腎臓病及び、心血管病に対してより有効な治療標的を明示し、新規の治療法開発に貢献できる情報を発信したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
すでに研究に必要な基盤技術及び機器の整備は終了している。また研究を行う本学研究センターの研究環境の整備も年々、行われており不足はない。使用予定であった糖尿病モデルマウスの購入の遅れにより次年度使用額が生じた。これは、25年度請求額と合わせ、マウス購入費などに使用する。in vivo imaging法に利用できる2光子レーザー顕微鏡が新規に導入される予定であり、実験高率はさらに高まることが期待できる。従って、次年度の研究費は主として消耗品、実験動物購入、論文作成等に当てられる予定である。過不足なく使用される予定である。
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