研究課題
【1.カテコラミンによるHDAC活性の制御の解明】我々はすでにカテコラミンがHDAC8をリン酸化し、その活性を抑制することを報告しているが、今回リン酸化抗体入手可能であったHDAC1~5のリン酸化を検討したが、明らかにリン酸化されるものは認めなかった。【2.酸化ストレスによるヒストンアセチル化メカニズムの解明】mDCT細胞を用いてH2O2、アンジオテンシンIIあるいは糖負荷により酸化ストレスを増大させる系を用いて検討した。酸化ストレスの定量は我々が確立している方法を用いてNADPH oxidase活性、4HNE, 3-Nitrotyrosineを指標に確認した。活性化測定の可能なHDACのうちHDAC2の活性が阻害された。しかしHDAC2のリン酸化には変化が無くチロシン残基のニトロ化が生じていた。HDAC2のチロシンの変異体を作成中である。【3.microRNAによるヒストン調節とmicroRNAの診断応用】腎臓に高発現している既報の73個のmicroRNAから実験2で酸化ストレスと密接に関連するHDAC2並びにp300/CBPをターゲットとしうるものをサーチした。miR144/337、miR335/212/326/669eを候補として現在強制発現させたmDCT細胞を用いてヒストンのアセチル化ならびにmicroRNAとヒストンの直接の関連をRNA免疫沈降(RIP)assayにて確認している。
3: やや遅れている
実験1ではリン酸化抗体のうち十分に評価に耐えうるものがそろわず、すべてのHDACについての評価ができなかった。今後腎臓に高発現するHDAC11などリン酸化抗体が手に入らないものについては活性を直接評価する必要がある。実験2では予想に反してリン酸化とは関係のなく活性が阻害されるHDAC2が見いだされ、実験計画の変更が必要となり、期間内に計画を進めることができなかった。実験3においてもHDAC2の重要性が明らかになったため当初候補として挙げたmicroRNAの検討を中止し、候補microRNAを変えたため、RIPアッセイが終了していない。
HDAC2のチロシンの変異体を作成し、変異体、野生型を強制発現させた細胞を作製する。この細胞で、WNK4の転写抑制に与える影響をルシフェラーゼレポーターアッセイを用いて確認する。さらに、クロマチン免疫沈降法(ChIPアッセイ)を用いてヒストンのアセチル化とWNK4プロモーター上のnegative GREの関連を確認する。miR144/337、miR335/212/326/669eとヒストンの直接の関連をRNA免疫沈降(RIP)assayにて確認する。またWNK4の転写抑制に与える影響をルシフェラーゼレポーターアッセイにて確認する。さらに、ChIPアッセイを用いてヒストンのアセチル化とWNK4プロモーター上のnegative GREの関連を確認する。さらに、miR144/337、miR335/212/326/669eを対象に、マウス血液、尿を用いてそれぞれ、血漿、尿、白血球細胞、尿細管細胞からmicroRNAをRT-PCRで測定するための条件を設定する。さらにこれらのmicroRNAの発現を正常マウス、カテコラミン投与マウス、我々が作成してきたアドレノメデュリン欠損マウス、酸化LDL受容体過剰発現マウスなどのモデルを用いて検証する。また、ラット、ヒトにおけるmicroRNAのホモログを検索する。
研究費は細胞培養、マウス飼育のための消耗品購入、microRNA作用の確認のためのRIP assay, ChIP assayの試薬並びに発現定量のためのRTPCR試薬代に充てる
すべて 2012 2011 その他
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (5件)
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