研究概要 |
糖尿病ラットにおける腎組織レニン・アンジオテンシン系の由来とその亢進の機序を明らかにし、その抑制により新たな治療を開発することを目的とした。 糖尿病では血中のレニン・アンジオテンシン系は抑制されているが,腎組織ではレニン・アンジオテンシン系が亢進しているとされるが,その由来や亢進の機序は十分に解明されていない。プロレニンは分子量47kDでアルブミン68kDより小さいが、糸球体濾過係数は0.001前後で正常ラットではほとんど濾過されない。しかし、微量アルブミン尿のみられる糖尿病ではプロレニンは糸球体で濾過され、podocyteや尿細管のプロレニン受容体を介してendocytosisされ、腎組織プロレニンの亢進の原因となり得ることを示した。プロレニン受容体はH+-ATPase subunit ATP6ap2と相同性があり、集合尿細管間在細胞,podocyte,近位尿細管などH+-ATPaseの発現の多い部位でエンドソーム内にプロレニンが取り込まれた。アルブミンのエンドサイトーシスと同様にメガリンがアンジオテンシノーゲンとプロレニンの受容体となっておりプロレニンのエンドサイトーシスはネフロンの共通した部位でみられており、微量アルブミン尿が腎組織レニンアンジオテンシン系の亢進のマーカーになると考えられる。H+-ATPaseの阻害薬がエンドサイトーシスの調節に関与し、新たな治療分子ターゲットになり得ることを次の研究への橋渡しとして本研究を終了した。
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