研究課題/領域番号 |
23591218
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
辰巳 佐和子 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 助教 (80420545)
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研究分担者 |
木戸 慎介 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 特任助教 (30437652)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | NAD / リン代謝 |
研究概要 |
慢性腎臓病(CKD)は高リン血症から、副甲状腺機能亢進症、腎性骨症、異所性石灰化などの合併症が惹起され、生命予後を悪化させる。 全身性の代謝、老化制御機構として「NADワールド」と名付けられた新たな概念は、NADが各臓器、組織における様々な代謝のペースメーカーであることを示す。これまでの骨細胞死滅マウスの研究で、腸管,肝臓由来の未同定である因子がニコチンアミド代謝を介してリン代謝を制御する可能性を見いだした。そこで当該年度は、骨細胞死滅マウスを利用し、リン代謝およびニコチンアミド代謝を検討した。結果として、腎臓ナトリウムリン酸トランスポーターであるNaPi-IIa NaPi-IIcの著しい減少により尿からのリン再吸収が抑制され尿中へのリン排泄が増加した。骨細胞より分泌されるリン利尿因子であるFGF23 (fibroblast growth factor 23)は正常マウスの40%以下であり、また副甲状腺ホルモン(PTH)は変化がなかった。そのため、FGF23, PTHとは異なるリン利尿促進因子が腎臓に作用していると考えられた。次に腎臓でのニコチンアミド代謝を検討した結果、腎臓内NAD代謝の亢進が認められた。現在、ニコチンアミド代謝酵素ノックアウトマウスの作成に着手した。またニコチンアミド代謝経路を介したリン酸トランスポーター発現制御機構について培養細胞を使用し検討している。本研究でリン排泄促進機構における、ニコチンアミド代謝の重要性を提示し、未同定である腸管、肝臓由来のニコチンアミド代謝制御因子を同定することは、CKD患者の新たなリン恒常性維持、異所性石灰化の予防、老化促進防御の基盤研究となると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度の研究実施計画では1)骨細胞欠損マウスのリン代謝異常を明らかにすること、2)本マウスのニコチンアミド代謝を検討し、リン代謝異常との関連を見いだすこと、3)ニコチンアミド代謝酵素のノックアウトマウス作出の3つであった。成果でも示した様に1)、2)事項については研究を進める事が出来た。しかしながら、3)のニコチンアミド代謝酵素のノックアウトマウス作成のためのコンストラクション作成がやや遅れている。コンストラクションの確認を進行している所であるため。確認終了後速やかにノックアウトマウスの作出を依頼する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
基本的には研究実施計画に基づき研究を推進する。平成24年度はニコチンアミド代謝酵素のノックアウトマウスの作出、解析となるため、現状ではやや遅れているマウスの作出を速やかに推進する予定である。作出困難な場合については、コンストラクションの構造を予定しているものとは変更し、作製する。また、コンストラクションが導入されたES細胞の入手も検討し、研究を推進する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度の研究費では、平成24年度への繰り越しを行なった。これは、遺伝子改変動物の作出のための導入遺伝子作成が遅れていることが原因である。 作出費用として予定していた研究費を使用し平成24年度内に遺伝子改変動物を作製し研究費を使用する。それに加え、平成24年度は作出した遺伝子改変動物のリン代謝について、腎臓、骨、腸管、肝臓を中心に検討する。さらに本遺伝子改変動物を用い、ニコチンアミド代謝を介したリン調節機構に関わるメタボライトの同定を目指し、メタボローム解析を行なう。次にニコチンアミド代謝を調節する肝臓、腸管由来のリン代謝調節関連因子の探索を培養細胞のアッセイ系を用いて行なう。これらに研究費を使用し研究を推進し、NADワールドとリン代謝の関連を明らかにすることで慢性腎臓病患者の新たなリン恒常性維持機構の解明につながる成果を出す。
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