研究課題
慢性腎臓病(CKD)患者数、透析導入数の増加にともないCKDへの取り組みが、世界的に注目されている。慢性腎臓病は腎臓の廃絶を引き起こすのみならず合併症として、ミネラル代謝異常(高リン血症)、二次性副甲状腺機能亢進症、腎性骨症および異所性石灰化が惹起され、生命予後を悪化させる。老化に伴い通常腎機能は低下することから、近年の急速な高齢化社会でのCKDの予防、 進行の防御は急務であり、FGF23、血中リン濃度にかわる早期慢性腎臓病のマーカの探索は必須である。申請者は、全身性の代謝、老化制御機構として重要なNADがリン代謝制御に係っているという仮説の元に、平成23年度より研究を進めてきた。 平成24年度は平成23年度の成果をふまえ、NAD合成酵素であるNampt とリン代謝の関わりを中心に解析を進めた。Namptへテロノックアウトマウスを入手しリンン代謝を解析したところ、大きな変動は認められなかった。しかしながら、Nampt特異的阻害剤であるFK866を投与することで、腎臓でのNAD産生の抑制が引き金となって、リン代謝に大きな変動を認めた。本メカニズムを詳細に解析するために、フクロネズミ腎臓近位尿細管細胞(OK細胞)を用いてNamptおよびFK866のリン輸送活性、およびナトリウム依存性リン酸トランスポーター(NaPi-4)発現への影響を検討した。Namptの作用がNaPi-4の発現を著しく低下させる事を見いだした。またこの作用はNamptの酵素活性に依存していることを明らかにした。以上の成果から、現在Namptを介したNaPi-4の分解経路について阻害剤などを用いて詳細に解析している。さらに腎臓近位尿細管特異的Nampt過剰発現マウス作成のコンストラクションが作成できたので、トランスジェニックマウスの作出に取り組んでいる。
2: おおむね順調に進展している
Namptへテロマウスノックアウトマウスを入手しリン代謝との関連を十分に解析できるシステムを立ち上げた。さらに、Namptとリン代謝の関連を詳細に解析するための培養細胞系の確立も進んだ。また平成23年、24年の成果をもとに論文作成に着手することが出来た。以上のことから、おおむね順調に進展していると考えられる。
おおむね順調に研究が進んでいる。基本的には研究実施計画に基づき研究を推進する。慢性腎臓病における全身性のNAD代謝を、in vivo、in vitroでの両面からの実験で明らかにし、治療に貢献できる分子基盤を明確にする。
次年度への繰越額は遺伝子組み換え動物維持費用に加えて使用する予定である。
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