研究課題
慢性腎臓病(CKD)は高リン血症から、副甲状腺機能亢進症、腎性骨症、異所性石灰化などの合併症が惹起され、生命予後を悪化させる。 全身性の代謝、老化制御機構として「NAD ワールド」と名付けられた新たな概念は、NAD が各臓器、組織における様々な代謝のペースメーカーであることを示す。更に全身性NAD 合成関連酵素(Nampt)はNAD 合成系を制御し、老化関連遺伝子でSirt1 の脱アセチル化活性を調節する。そこで我々はこれまでの研究よりNamptが各種臓器、血管でのリン/カルシウム比を一定にする機構に関与するとの仮説をたて、Namptを介した新たなリン代謝経路の存在を明らかにする研究に取り組んだ。最終年度である平成25年度は平成23、24年度の成果をさらに発展させた。1)Namptの活性化が、腸管リン吸収阻害、腎臓での尿中リン排泄促進機序の解明を行なった。NamptはNADを合成する酵素としての働きが知られている。しかしながら今回の我々の結果から、腸管からのリン吸収阻害および腎臓での尿中リン排泄促進作用は組織内NAD量に依存するのではなく、Nampt酵素活性に依存することを見いだした。1)Namptが腸管、腎臓で活性化すると、各々の組織に発現する2型ナトリウム依存性リン酸トランスポーター(NaPi-IIa, NaPi-IIb NaPi-IIc)の膜発現量が著しく減少する。2)Nampt酵素活性の阻害剤であるFK866により、1)および2)の現象を完全に抑制することが出来た。3)これまで、不明であった肝臓切除患者の予後を悪化させる低リン血症の原因は、ニコチンアミド/Nampt経路の活性化によるリン吸収阻害、および尿中リン排泄促進作用によることを明らかにした。4) 腎機能低下モデルにおいてリン吸収を抑制するための創薬に応用できる可能性を示唆し、現在検討している。1)から3)の成果を中心にまとめて平成25年度に論文発表をした。
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