研究課題/領域番号 |
23591219
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
高尾 俊弘 高知大学, 教育研究部医療学系, 教授 (00243824)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 細胞障害 / 酸化ストレス |
研究概要 |
腎尿細管細胞に対し、高グルコースを負荷すると細胞障害がおこる。細胞障害の指標として、培養液中のN-acetyl-beta-glucosaminidase (NAG)を測定した。高グルコースによりNAGは有意に増加した。また高グルコースによりNAD(P)Hオキシダーゼのコンポーネントp22phoxが有意に上昇した。さらに高グルコースにより細胞内酸化ストレスが増加したことをDCFHを用いて確認した。高グルコースは核内のNFkBを有意に増加させた。 高グルコースによる酸化ストレス、細胞障害のメカニズムを検討するために、サイトカインの1つであるTumor necrosis factor-alpha(TNFalpha)の関与について検討した。まず細胞にTNFalpha単独添加するにより、培養液中のNAGは増加した。またTNFalphaは細胞内酸化ストレスを増加させた。さらにTNFalphaにより核内のNFkappaBは増加した。ここで、高グルコースとTNFalphaの関係を調べた。高グルコースは細胞内のTNFalpha蛋白を増加させた。 アンジオテンシンII受容体阻害薬(ARB)の1つであるカンデサルタンは高グルコースによるNAG、p22phox、NFkBの上昇を抑制した。ARBは高グルコースによるTNFalpha増加を抑制した。また、ARBはTNFalphaにより増加した核内のNFkBを抑制した。さらにARBは高グルコースによる核内のNFkB増加を抑制した。 これらのことより、高グルコースはTNFalphaを増加させ、増加したTNFalphaは細胞内の酸化ストレスを上昇させる。このことにより核内のNFkappaBが増加し、細胞障害が引き起こされる可能性がある。ARBの細胞保護効果の少なくとも一部はTNFalphaを抑制することにより惹起されることが推測される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
高グルコースに関する細胞障害の検討および アンジオテンシンII受容体阻害薬(ARB)の効果およびそのメカニズムの検討に関しては当初の計画より進んでいる。しかし、細胞内RA系コンポーネントの同定についての検討は進んでいない。レニン、アンジオテンシノーゲン、アンジオテンシン変換酵素、(プロ)レニン受容体や細胞内アンジオテンシンII受容体の局在についての検討が不十分である。また高グルコースによるTumor necrosis factor-alpha(TNFalpha)の関与についても更なる定量化が必要である。高グルコース以外の刺激、アルブミン、サイトカインによる細胞障害についても検討する必要がある。腎臓以外の細胞における検討は今後の課題である。
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今後の研究の推進方策 |
現在マウス由来の腎尿細管細胞を使用しているが、必要に応じてラット、ブタ、ヒトの細胞を使用することを考える。マウス由来の細胞についても他の系統を用いることも視野に入れる。 また高グルコースの実験ではグルコース濃度の設定も重要であると考え、現在行っている濃度範囲をさらに拡げた実験を考慮する。その場合浸透圧による影響に関しても検討する。 アンジオテンシンII濃度やTNFalpha濃度の測定に関しては精度の良いEISAが必要である。現在までに使用したEISAキットでは細胞培養液中のTNFalphaは検出できなかったため、測定方法を改善する必要がある。 さらに細胞障害実験に関してはアンジオテンシンII受容体の関与があるのかどうか、すなわちARBの作用が受容体を介したものか否かを検討することにより、細胞障害時の細胞内RA系コンポーネント関与の機序を明らかにする。これらを行うためにはアンジオテンシンII受容体をノックダウンした系を作成して検討する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
細胞、抗体、細胞培養試薬、細胞培養器具、生化学実験試薬、EISAキット等、細胞実験に必要な物品。 実験結果解析に必要なPC、メディアおよびソフトウエア類等。 研究打ち合わせおよび成果発表のための旅費等。 これらを計画的に使用する予定である。
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