研究概要 |
これまでの研究によって、『高血圧症の食塩感受性をもたらす尿細管性機序の分子病態』にかかわる分子(angiotensinogen, renin, alternative renin, EnaC, Nedd4L)の遺伝学的・生物学的意義を明らかにすることができた。高度に分化した尿細管上皮細胞は、相互にtight junctionによって結合し、発生学的に尿管芽由来の尿細管腔を形成している。これまでの我々の研究によって、近位尿細管細胞でのアンジオテンシノゲーン(AGT)、結合尿細管細胞で発現するレニンにより構成される尿細管RA系が、アルドステロン感受性遠位尿細管細胞(ASDN)に働いてENaCを介するナトリウム再吸収を調整することで生体の恒常性を保ち、その破綻が食塩感受性の病態をもたらし、高血圧症を発症する分子病態モデルを確立した。研究代表者は、2000年~2003年の間のユタ大学留学時代より、尿細管腔(apical)側からの制御について研究を深め、直近の成果としては、結合尿細管に特異的なレニンとして第二のマウスレニン遺伝子の同定とクローニングに成功した。(Ishigami T, et al. Hypertension. 2014) 高度に分化した尿細管上皮細胞には、近位尿細管細胞のAGT、結合尿細管細胞のレニン、 ASDNのENaC-Nedd4L系からなる、いわば尿細管内分泌系によるナトリウム恒常性の維持機構にかかわる分子について、ゲノムレベルから、in vivoに至るまでの分子病態を明らかにした。今後は、こうした個々の分子についての統合的・システム的な理解を深め、ヒトの高血圧症・食塩感受性についての、より論理的で精度の高い制御(診断・治療)を可能とする成果へと導いていく計画である。
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