研究課題/領域番号 |
23591225
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
篠村 裕之 慶應義塾大学, 医学部, 特任准教授 (00235293)
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研究分担者 |
伊藤 裕 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (40252457)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 高血圧 / 食塩 |
研究概要 |
雄DSラット(n=24) を4群に分け、コントロールを除く群では各々6週齢から14週齢まで低食塩食(0.12%NaCl)、高NaCl食(7%NaCl)、また高NaCl食と同等のNa負荷となる高Na/アミノ酸食(12.7%NaAA)を与えた後、正常食に戻し、その後約3か月間、定期的にtail-cuff法で血圧測定を行い、24時間蓄尿にて尿蛋白の変動、Na,Cl排泄量を測定した。30週で全群屠殺し、組織学的・生化学的解析を行った。その結果、高NaCl食一過性投与群では、高NaCl食投与により収縮期血圧が200 mmHg前後に上昇した。また、正常食に戻した後も、血圧は正常化せず、高NaCl食中止4ヶ月後の時点でコントロール群に比して明らかな上昇(約40~50 mmHg)を認めた。高NaAA群では投与中、投与後ともコントロール群に比して軽度血圧上昇を認めたが、高NaCl群に比して有意に低値であった(コントロール群140±6、高NaCl群198±8**、高NaAA群162±4*、低食塩食群 144±4 mmHg)。一方、低食塩食では投与中わずかに血圧低値の傾向を一部認めたのみで、コントロール群との有意差を認めなかった。1日尿中Na排泄量は高NaCl群、高NaAA群で高Na食投与期間中は同等に上昇したが、尿中Cl排泄量は、高NaAA群で著明に抑制されていた。また、血漿レニン活性ならびに血漿アルドステロンは高NaCl群でのみ上昇していた(コントロール群2.3±0.6、高NaCl群4.2±0.7**、高NaAA群1.4±0.2、低食塩食群 2.4±0.5 ng/mL/h)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高血圧の発症には遺伝素因と環境因子が関与していることが示されており、環境因子の中でも特に塩分摂取が高血圧の発症に関連することが知られている。しかし、塩分と高血圧、高血圧性臓器障害発症との関連についてはいまだ不明な点が多く、特に、高血圧発症早期における塩分摂取の影響は明確にされていない。今回、高血圧発症時期の一時的な塩分バランスの変化の影響が記憶される「塩分メモリー」が存在するか否かを検討することを目的とした。具体的には、食塩感受性モデル動物であるDahl食塩感受性ラット(DSラット)、に一過性に高食塩食を投与して血圧上昇を起こした後に、通常食塩食に戻した場合の血圧の変化とその成因を検討する研究を行った。一連の実験により、DSラットで一過性に高食塩食を投与すると、正常食に戻した後も正常血圧に戻らない、すなわち「塩分メモリー」が存在することが示された。また、「塩分メモリー」が出現するためには、クロールイオンの存在が重要であることが示され、その機序にはレニンのresettingをもたらす発現調節機構が関与している可能性が初めて示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
上述した通り、これまでの一連の実験により、DSラットで一過性に高食塩食を投与すると、正常食に戻した後も正常血圧に戻らない、すなわち「塩分メモリー」が存在することが示された。この現象が他のモデル動物でも観察されるか否かを引き続き検討するために、本態性高血圧症のモデル動物である高血圧自然発症ラット(SHR)を用いる予定である。具体的には、雄SHR(n=30)を5群に分け、コントロールを除く群では同様に6週齢から14週齢まで低食塩食、高NaCl食、高NaAA食、また高NaCl食と同等のCl負荷となる高Cl/アミノ酸食(11.6%AACl)を与えた後、正常食に戻し、その後約2か月間、定期的にtail-cuff法で血圧測定を行い、24時間蓄尿にて尿蛋白およびNa,Cl排泄量を評価する。24週で全群屠殺し、組織学的・生化学的解析を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
腎・胸部大動脈・心臓のパラフィン固定標本を作製し、腎はPAS染色、大動脈はHE染色、心臓はMasson-trichrome染色を行う。各切片は光学顕微鏡で観察し、腎臓の組織学的変化を既報の方法に基づいてスコア化する予定である。また、血清BUN、Cr、血漿レニン活性、アルドステロンを、既存の方法で測定する。腎からmRNAを抽出し、レニン発現を、既報のreal-time RT-PCR法を用いて解析する。研究費はすべて物品費(実験用動物費・試薬・キット等)で使用する予定である。
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