研究課題
本研究は、成人発症かつ3~5年で呼吸不全をきたす過酷な神経変性疾患、筋萎縮性側索硬化症(ALS)を念頭に、脊髄における進行性の運動ニューロン変性に対して不十分ながら成体中枢神経系が本来もっている内在性再生能を有効に活用した神経再生誘導療法開発を目的としている。細胞補充のみを目的とした場合、外来性の細胞移植と内在性神経幹/前駆細胞活性化という2つのアプローチがあるが、本研究はそのいずれにとっても重要な「再生の場」すなわち微小環境に重きをおいている点が特徴である。一方、変性脊髄における内在性再生能は、成体脊髄に内在する神経幹/前駆細胞のみならず、再生や可塑性を許容または制限し得る細胞外微小環境によって規定されている。本年度の研究により、ALSモデルラット脊髄運動ニューロンの変性が進行する中で、生理的条件下では検出されない表現形質をもつグリア系細胞が病変の主座(脊髄前角)を中心に新生・増殖していること、それらがいわゆる神経炎症を増悪している可能性が明らかとなった。さらに、新生血管を安定化する外来性因子の選択的な脊髄腔内持続投与という治療戦略が、神経炎症を抑制し、神経保護につながる可能性を見出した。将来的なALS再生誘導療法開発においては、単なる運動ニューロン補充ではなく、再生の場である微小環境を形成する細胞因子として新生グリア細胞、新生血管のコントロールもまた重要と考えられ、さらなる本研究の進展が期待される。
2: おおむね順調に進展している
試薬類の再購入、ALSモデルラットの繁殖・コロニー復元、アッセイ系の再構築と対照凍結サンプルの再取得を達成した。研究推進体制は円滑に稼働しており、既に新規の研究成果を得ている。
当初研究計画に則り、運動ニューロン変性によるALSモデルラット神経幹/前駆細胞挙動解析を完遂すると同時に、介入研究として神経幹/前駆細胞、微小血管、グリア系前駆細胞をそれぞれ標的とした脊髄腔内投与実験を行い、神経変性に対する保護効果を検証する。
「該当なし」
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J Neurol
巻: Feb 23. [Epub ahead of print] ページ: -
10.1007/s00415-013-6877-3
Glia
巻: 60(5) ページ: 782-793
10.1002/glia.22308
http://www.neurol.med.tohoku.ac.jp/index.html