研究課題
進行性の運動ニューロン変性に対して、不十分ながら成体脊髄がもつ内在性の再生能力を活性化させる効果的な神経再生誘導法を開発するための基盤研究を行った。本研究では、筋萎縮性側索硬化症(ALS)変性脊髄における内在する神経幹/前駆細胞を単に増殖させるだけでなく、過度なグリア新生の抑制、ニューロン新生の促進、そのために必要な微小血管新生のコントロールを効果的に行って再生の場を形成する治療戦略を見出すことを目的としている。前年度までに、発症後のALSモデルラット脊髄に未分化神経前駆細胞の増殖と未成熟ニューロンのマーカーを発現するニューロンの出現を確認した。さらに、ALSモデルラット骨格筋においても運動ニューロン軸索変性に伴う神経原性筋萎縮が慢性に進行する中で、内在性の骨格筋再生機転が存在していることが明らかとなった。本年度、ALS脊髄運動ニューロンの変性脱落に伴う新生細胞の増加を潜在的な神経新生環境とみられる脊髄中心管周囲においても解析した。脊髄中心管周囲では、運動ニューロン病変から離れているにもかかわらず発症早期から活発な新生細胞増加が認められた。その多くはグリア増生とグリア炎症に関与している中で、少ないながら内在性未分化神経前駆細胞の増殖も認められた。このALSモデルラットで再生誘導因子、とくに微小血管新生調整作用をもつ因子の髄腔内持続投与を発症後に行うと、部分的な内在性再生機転の促進が認められた。このような神経再生誘導が新たな治療戦略となる可能性がある。一方、新たに内在性再生を検出しやすいALSモデルラットの作出を試みた。現在、ALSモデルラットとしての妥当性、および胎生期から生後、ALS様症状の発症期に至るまで、内在性神経幹/前駆細胞を中心に縦断的な組織学的解析を行っている。
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神経治療学
巻: 30(6) ページ: 718-721
J Neurol
巻: 260(7) ページ: 1782-1797
10.1038/jhg.2013.9.
http://www.neurol.med.tohoku.ac.jp/index.html