研究課題/領域番号 |
23591233
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
市川 弥生子 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (90341081)
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キーワード | ゲノム解析研究 / 原因遺伝子 / ミオパチー / 拡張型心筋症 |
研究概要 |
拡張型心筋症を伴う常染色体優性遺伝性ネマリンミオパチーの一家系について解析を行った。発症者2名、非発症者2名、発端者の非発症の親ついて連鎖解析を行い、約800kbの候補領域を定めた。 発端者についてexome解析を行ったところ、トータルのリード配列は79,617,248 readsで、このうち99.38%がリファレンス配列にマップされた。連鎖解析から得られた候補領域内のexon領域において、既知のデータベース(dbSNP)にない新規一塩基置換変異(Single nucleotide variation: SNV)は77個であった。このうちcoverage 3x以上でアミノ酸置換を伴うSNVは42個であった。42個のSNVについて家系内変異解析を行ったところ、家系内で発症者のみ変異を認め、275名の正常対照者でのスクリーニングで変異を認めなかったSNVを1個認めた。このSNVを発現ベクターに組み込んだコンストラクトを作成した。 Exome解析では、解読困難な領域も存在し変異を取りこぼす可能性もあるため、発端者について全ゲノム解析も行った。総リード数:1867795082 readsで、そのうち1768531399readsがリファレンス配列にマップされた(マッピング率 94.68%、カバー率は平均57.12)。全ゲノム解析の結果、既知のデータベースにない、新規SNV、挿入/欠失変異は11708個であった。このうち候補領域にある変異は67個で、母親由来と考えられるものが30個あり、残りの37個について、今後家系内解析、正常対照者スクリーニングを行っていく予定である。 類似症例については、拡張型心筋症を呈するネマリンミオパチー症例が本邦に存在することがわかり、同意を得て、DNA抽出のための採血を行った。この症例については、ACTA1の既知変異が同定された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
発端者におけるexome解析、全ゲノム解析は終了している。連鎖解析から得られた候補領域、既知のデータベースにないアミノ酸置換配列についてふるい分けを行い、検出された変異について絞り込みを行っている。
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今後の研究の推進方策 |
全ゲノム解析で得られた37個の変異について、サンガー法による直接塩基配列解析を用いて発症者での変異を確認後、家系内解析(共分離の確認)、正常対照者でのスクリーニングを行い、候補遺伝子について絞り込んでいく。 絞りこまれた候補遺伝子変異については、変異を培養細胞に導入して、機能解析を行うということによっても、病的変異の可能性について検討し、原因遺伝子変異同定を進めていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
全ゲノム解析で検出された変異について、引き続きサンガー法による直接塩基配列解析を行っていく。 変異が同定されたならば、病的変異であることを証明するために正常対照者のスクリーニング、類似症例のスクリーニングを直接塩基配列解析により進める。直接塩基配列解析にはPCR関連試薬、シークエンス反応関連試薬、プライマー費用が必要となる。 候補遺伝子変異が絞り込まれたならば、培養細胞系での機能解析も行い、変異の及ぼす影響について検討を行う。培養細胞および培養試薬が必要となる。
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