研究概要 |
【目的】ヒト疾患脳組織(歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症;DRPLA)での重合体の検出を行ない、解剖部位毎のポリグルタミン鎖重合体の蓄積の差異を検証し、神経変性(神経細胞死)と重合体蓄積との関連を検証する。【方法】新潟大学脳研究所病理学分野の病理献体から提供を受けた DRPLA 症例6例および対照9例(アルツハイマー病 2例、パーキンソン病 2例、他に非変性疾患 4名) の脳組織凍結標本の大脳皮質、被殻、淡蒼球、小脳歯状核を検討した。各組織標 本に RIPA buffer を加え、超音波破砕法にて弱変性状態で蛋白抽出した。1% アガロースゲルで電気泳動し、Western blot法にて重合体をスメアバンドとして検出した。【結果】1) DRPLA患者由来サンプルにおいて重合体を表す高分子のスメアバンドを特異的に検出した。大脳皮質では5例中2例、被殻では4例中2例、淡蒼球では3例中1例、小脳歯状核では5例中1例で重合体の蓄積を認めた。一方で、神経変性疾患以外の対照患者(Alzheimer病、Parkinson病由来サンプルでは、いずれの解剖部位においても重合体の蓄積を認めなかった。2)病理組織 HE 標本との比較検討では、重合体の蓄積が顕著であったDRPLA 症例の淡蒼球では、蓄積を認めなかったDRPLA 症例 に比較して、神経細胞脱落と細胞体萎縮等の変性所見がより高度であった。3)大脳皮質における重合体の蓄積量とグルタミン伸長数(R2=0.957, p<0.01)、小脳歯状核における重合体の蓄積量と罹病期間(R2=0.979, p<0.01)との間に有意な正の相関を認めた。【考察】ポリグルタミン鎖重合体は、疾患特異的に蓄積し、病理検討においても重合体蓄積と神経変性の程度に関連を認めたことより、重合体の病態への関わりをヒト疾患脳において証明し得た。
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次年度の研究費の使用計画 |
【平成24年度】薬剤添加によるポリグルタミン鎖二量体形成を蛍光native-PAGE法により検討する。ポリグルタミン鎖を含む抽出蛋白は、HEK293T細胞に部分 DRPLA Q80-mYFPを発現するplasmidをtransfection 48時間後にcell lysateを回収することで用意する。このポリグルタミン鎖に各種薬剤を添加し、非変性状態で10% ポリアクリルアミドゲル(Wako)にてnative-PAGEを行ない、蛍光イメージスキャナー(Typhoon9400, GEヘルスケア)にて二量体のバンド検出を行う。 上記研究内容の遂行の為、通年的な細胞培養が必要で、細胞関連試薬、細胞培養維持費用が必要となる。また、ポリグルタミン蛋白はリポフェクションによるplasmidの一過性発現を必要とするため、実験毎にtransfection試薬を必要とする。加えて、選定薬剤費用、native-PAGEに使用するポリアクリルアミドゲル費用等がおもな直接経費の使用用途となる。研究計画上に必要な測定機器はすでに準備済みであるため、高額な設備購入は計画していない。・細胞培養関連 (ディシュ, ピペット類, 抗生物質,CO2, 液体培地, 血清など)400,000・ transfection試薬 (lipofectamine2000:Invitrogenなど) 200,000・ native-PAGE (ポリアクリルアミドゲルなど) 200,000・ 各種選定薬剤 300,000
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