研究概要 |
視神経脊髄炎 (NMO) は長い間, 多発性硬化症 (MS) との異同が論じられてきた中枢神経系脱髄疾患である。近年, 疾患特異的自己抗体 (NMO-IgG) が発見され, NMOはアクアポリン4水チャネル (AQP4) を標的とするアストロサイトパチーであることが明らかにされた。NMOは, MSとは異なり, I型インターフェロン (IFN) 療法が疾患増悪因子となることが特徴である。本研究では「自然免疫機構が内因性のI型IFNシグナルを亢進させ, 免疫寛容を破綻させることで, AQP4抗原に対する自己免疫応答を活性化し, NMOに特徴的な視神経炎・脊髄炎を発症する」という作業仮説を立て, 初年度から最終年度までに以下の点を明らかにした。 1. NMOの脊髄病巣ではAQP4の染色性低下に加え, 血管周囲の免疫グロブリンと補体沈着, 好中球・好酸球, マクロファージの浸潤を認める。2. NMOの髄膜にはCD45RO+T細胞, CD20+B細胞, Ki67+CD138+形質芽細胞, Ki67negCD138+形質細胞の他に, MHC class II陽性抗原提示細胞の盛んな増生を認める。しかし CD21+CD35+濾胞樹状細胞を含むgerminal centerを認めない。3. NMOの末梢血では多数の形質芽細胞を認める一方, 自然リンパ球は減少している。形質芽細胞と自然リンパ球の動的変化は関連している。4. NMOのヘルパーT細胞はIL-17・IFN-γ産生に偏奇している。5. NMOの大脳皮質にはミクロクグリアの活性化, 大脳皮質I層にAQP4を消失したアストロサイト, 神経細胞脱落を認めるが, 脱髄を認めない。6. 上記1-5の変化はMSで明らかでない。以上から, NMOはMSとは異なる自然免疫システムを使うことで, NMOに独特な自己免疫病態を形成・維持すると考えられた。
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