研究課題
H24年度は,これまでにTTRアミロイドーシスと診断した患者にTTR四量体を安定化する薬剤(diflunisal, tafamidis)を投与した有効性と安全性の途中経過を評価した.これまでに,家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP)44名,老人性全身性アミロイドーシス(SSA)8名のTTRアミロイドーシス患者に対してTTR四量体構造を安定化する新規治療薬の治療介入を開始しているが,H24年度はこのうち過去の症例との比較対象が可能なTTR遺伝子の Val30Met変異を有する高齢発症 FAP患者18名(ATTR Val30Met FAP患者,男性15名,女性3名,平均年齢66.3+-7.3歳)に対するdiflunisalの有効性を評価した.対象患者としてdiflunisalの投与を受けていない27 名の高齢発症ATTR Val30Met FAP患者(男性23名,女性4名,平均年齢67.6+-6.4歳)の検討を行った.尺骨神経の複合筋活動電位(CMAP)の振幅の低下率は,diflunisal投与群で6.6%+-14.7%/年,対照群で30.5%+-15.2%/年であり,diflunisal投与群で優位に低下率が小さかった(p = 0.0003).また,対照群ではBaselineで脛骨神経のCMAPが検出可能であった10名全員が経過観察期間中にCMAP検出不能となったが,diflunisal投与群では,経過観察期間中に脛骨神経のCMAPが検出不能となったのは,12名中4名(33.3%)であった(p = 0.002).以上から,diflunisalは高齢発症ATTR Val30Met FAP患者における末梢神経機能の悪化を抑制する可能性が示唆された.安全性については,diflunisalに関連する重篤な有害事象の発生は認められなかった.
2: おおむね順調に進展している
H24年度までに我々の施設で診断した家族性TTRアミロイドーシス(FAP)患者281名および老人性全身性アミロイドーシス(SSA)患者16名の臨床像,診断方法に関する解析を終了した.また,H24年度までにFAP44名,SSA8名のTTRアミロイドーシス患者に対してdiflunisalやtafamidisなどのTTR四量体構造を安定化する新規治療薬の治療介入を開始している.これまでのところ,治療薬に関連する重篤な有害事象は認められておらず,長期的な経過観察が可能である.以上から,研究の期間内に新規治療の有効性および安全性の評価が可能であると予想される.
これまでの研究で,家族性TTRアミロイドーシスには腹壁脂肪吸引生検の感度が高く,一方,老人性全身性アミロイドーシスでは,心筋生検や胃十二指腸粘膜生検の感度が比較的高いことが明らかとなった.また,侵襲性の高い心筋生検の代わりに,99mTc-ピロリン酸心筋シンチを診断に用いる事も可能と考えられた.これらの知見を元に,TTRアミロイドーシス患者を早期に診断し,TTR蛋白の天然構造を安定化させる新規治療(diflunisalの内服治療)を52名の患者に開始している.今後は,長期間のdiflunisal内服の有用性および安全性を評価し,本年度中に結果を解析し論文発表する予定である.
研究費の大部分は試薬品代として使用する.研究史薬は,TTR遺伝子の解析および生検組織の免疫組織化学染色を行うために使用する.また業績を発表する際の,英文校正および別刷りにも使用する.更に,研究結果をブラジルで開催される第9回家族性アミロイドポリニューロパチー国際シンポジウムで発表する予定であり,この旅費にも使用する予定である.また、平成24年には当初計画時より研究試薬が安価で購入できた為、次年度使用額が生じた。
すべて 2013 2012
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (10件) (うち招待講演 1件) 図書 (1件)
臨床神経学
巻: 53 ページ: 196-204
循環器内科
巻: 71 ページ: 526-533
Intern Med
巻: 51 ページ: 465-469
10.2169/internalmedicine.51.6369
Amyloid
巻: 19 ページ: 118-121
10.3109/13506129.2012.685131
巻: 19 Suppl 1 ページ: 274-281
10.3109/13506129.2012.678509
新しい診断と治療のABC
巻: 75 ページ: 186-195