研究課題/領域番号 |
23591238
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
池田 修一 信州大学, 医学部, 教授 (60135134)
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研究分担者 |
高橋 幸利 独立行政法人国立病院機構(静岡・てんかん神経医療センター臨床研究部), 統括診療部, 部長 (70262764)
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キーワード | 非ヘルペス性脳炎 / 辺緑系脳炎 / 自己免疫性脳炎 / 卵巣奇形腫 |
研究概要 |
抗NMDAR脳炎はその疾患概念が提唱された当初は若い女性に好発して、卵巣奇形腫を基礎疾患として有していることが強調された。しかし最近の多数例の検索では女性患者における卵巣奇形腫の合併率は40%以下であり、また全患者の10%が男性であることも判明している。そこで平成24年度はヒトの正常卵巣と精巣におけるNMDAR関連抗原の発現を免疫組織化学的に検索した。 剖検で得られたヒト卵巣11個(年齢18~29歳)と精巣3個(年齢19~34歳)のパラフィンブロックから連続切片を作成して、NMDAR関連抗原に対する3種類の抗体(抗NR1抗体、抗NR2A抗体、抗NR2B抗体)と抗glial fibrillary acidic protein (GFAP)抗体を用いて免疫組織化学的染色を行った。その結果、卵巣11個の全ての原始卵胞細胞の胞体内にNR2B抗原の発現が見出された。しかしこれらの原始卵胞細胞におけるNR1、NR2A、 GFAPの発現は確認されなかった。一方、精巣3個においてはこれら4種類の蛋白の発現は全くみられなかった。以上よりヒト正常卵巣においてはNMDAR関連抗原が発現していることが示唆され、この蛋白抗原が何らかの免疫学的機序により抗NMDAR抗体を産生して、重篤な脳炎を引き起こすことが推測される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度はヒトの剖検組織を対象として免疫組織化学的検索を行い、従来、2例の正常卵巣組織のみで見出していたNMDAR関連抗原の発現を、多数例において確認することができた。昨年度既に同様の所見をウシの複数個の卵巣においても見出しており、正常卵巣組織においてNMDAR関連抗原が発現しているとする免疫組織化学的根拠を十分に得た。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の重要課題は抗NMDAR脳炎が何故女性に好発するのかを解明することである。われわれは仮説として女性の正常卵巣組織、特に卵細胞にNMDAR関連抗原が含まれており、何らかの免疫学的機序によりこの蛋白の抗原提示が起こり、抗NMDAR抗体が産生されて重篤な脳炎を引き起こすと考えている。従来の免疫組織化学的検索で得られた所見を基に、今後はウシの未受精卵ならびに凍結保存してある卵巣を用いてNMDAR関連蛋白を蛋白化学的に分離・同定することを計画している。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費の大部分は試薬品代として使用する。研究試薬はウシの未受精卵、卵巣組織からNMDAR関連蛋白を分離・精製する際の電気泳動ならびに免疫化学的反応を行うために使用する。また、平成24年度には当初予定していた研究試薬が安価で購入できた為、次年度使用額が生じた。
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