研究課題/領域番号 |
23591238
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
池田 修一 信州大学, 医学部, 教授 (60135134)
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研究分担者 |
高橋 幸利 独立行政法人国立病院機構(静岡・てんかん神経医療センター臨床研究部), 統括診療部, 部長 (70262764)
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キーワード | 辺縁系脳炎 / 自己免疫性脳炎 / NMDA受容体 / 卵巣 / 未受精卵 / 蛋白解析 |
研究概要 |
研究目的:抗N-methyl-D-aspartate(NMDA)受容体脳炎はNMDA受容体のNR1/NR2ヘテロマーに対する抗体が出現することにより発症する自己免疫性辺縁系脳炎である。今回、ウシ卵巣とウシ未受精卵を用いてNMDA受容体タンパクの分離同定を試みた。 研究方法:対象として剖検で得られたウシ5頭(年齢2~6歳)の正常卵巣、ウシ未受精卵1031個を用いた。 1.ウシ卵巣と未受精卵をそれぞれPBS溶液でホモゲナイズし遠心分離。沈殿分画をさらにRIPA溶液でホモゲナイズし遠心上清をNMDA受容体サブユニットの各抗体で免疫沈降した。得られた沈降物を用いウエスタンブロッティングを行った。2.ウシ未受精卵を準備し、沈降物をトリプシン消化した後、液体クロマトグラフィー質量分析器で分析した。3.ウシ未受精卵と抗NMDA受容体脳炎患者の血清IgGを反応させ、両者の親和性を免疫蛍光抗体法で検討した。 研究結果:ウエスタンブロット法でNR1・NR2B各サブユニットと考えられる陽性バンドが得られ、液体クロマトグラフィー質量分析器ではNMDA受容体の遺伝子情報と一致する、NR1・NR2A・NR2B・NR2Cのペプチドフラグメント(NR1 593-599 : SPFGRFK、869-874:KNLQDR、NR2A 339-348:GVEDALVSLK、NR2B 1421-1429 : QPTVAGAPK、NR2C 817-823 : NEVMSSK)が同定できた。ウシ未受精卵は抗NMDA受容体脳炎患者の高力価の血清IgGと強く反応した。 考察:従来抗NMDA受容体脳炎の抗原提示部位は卵巣奇形腫内の神経組織とされてきたが、正常卵胞にNMDA受容体の発現が示されたことから、本症女性例では卵巣奇形腫の合併・非合併を問わず卵巣における何らかの刺激が抗原提示を誘発し抗NMDA受容体抗体の産生につながる。
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