研究課題/領域番号 |
23591243
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
植村 健吾 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00378663)
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研究分担者 |
木下 彩栄 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80321610)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | アルツハイマー病 / 神経変性疾患 / 国際情報交流(アメリカ) / アミロイド前駆体蛋白 |
研究概要 |
アミロイド前駆体蛋白質(APP)からのアミロイドβの切り出しに影響を与える因子として、APPのダイマー化に着目した。APPのダイマー化は、近年アミロイドβ蛋白の産生に影響を与える因子として注目されているが、生体内でどのようなシグナルがAPPのダイマー化を変化させるかについては不明であるため、この点をまず明らかにしようと考えた。この目的で、APPのダイマー化の度合いを簡単に定量できる手法として、新たにスプリットルシフェラーゼ法を利用したアッセイ系を確立した。この手法はAPPのダイマー量をルシフェラーゼの発光量で半定量する手法であり、細胞系に簡単に応用し、ダイマー化を促進する因子を検討することが可能である。以前よりシナプス活動がアミロイドβの産生を促進する事が報告されているため、シナプス結合とAPPダイマー化の関係について検討することとした。シナプス結合に必須の細胞接着分子であるN-カドヘリンは、APPの切断酵素の活性中心であるプレセニリンと結合し、その構造を変化させることを以前に報告した。この研究成果を踏まえ、N-カドヘリンによる細胞接着がAPPのダイマー化に与える影響をスプリットルシフェラーゼ法を用いて解析した。結果、興味深い事にN-カドヘリンによってAPPのダイマー化が促進され、特に40アミノ酸からなるアミロイドβペプチドの産生を促進することが示された。また、免疫沈降法などによる検討で、N-カドヘリンはAPPの細胞外ドメインを介したダイマー化を促進する機能があることを示した。本研究は、APPのダイマー化を調整する細胞内因子を初めて示したものであり、成果を欧文誌(J. Neurochem.)に報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究計画は、APPの膜内挿入状況に応じてその切断が影響を受けることを示し、結果毒性の強い42アミノ酸からなるアミロイドβの産生に至るメカニズムを解明することが目的である。さらに、得られたメカニズムに関する知見を応用し、毒性の強いアミロイドβの産生を抑制する方法を得る事が次の段階の目的である。現在までの成果は、APPの膜内でのダイマー化がアミロイドβの産生に深い影響を与えている事、さらに、細胞接着の状態がAPPの膜内でのダイマー化に寄与している事を示したものであり、アミロイド産生に対するAPPの膜内での状態の影響を示すという当初の目的はおおむね順調に達成できていると考える。また、膜内でのAPPのダイマー化を簡便に検出できるスクリーニング系(スプリットルシフェラーゼアッセイ)を確立したことは、今後の薬剤スクリーニングなどを行う上で、非常に有用であり、この点も順調に進展してきているものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後、さらにAPPの膜内でのダイマー化を調節する環境因子について、引き続きスプリットルシフェラーゼアッセイを用いて検討を進める。特に、微量金属である銅に着目し、銅がAPPのダイマー化に与える影響、アミロイドの産生に与える影響についても検討をすすめていく予定である。また、スプリットルシフェラーゼを応用した薬剤のスクリーニング実験についても押し進めて行く。
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次年度の研究費の使用計画 |
本計画の遂行に必要な機材はすべて揃っているため、研究費はすべてを細胞培養用品(培地、ピペットなど)や、抗体などの消耗品に当てる予定である。前年度末に行う予定であった研究の一部を本年度に行う予定に延期したため、前年度から一部研究費の繰り越しを行った。
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