研究課題/領域番号 |
23591243
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
植村 健吾 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00378663)
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研究分担者 |
木下 彩栄 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80321610)
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キーワード | アルツハイマー病 / 神経変性疾患 / 国際情報交流(アメリカ) / アミロイド前駆体蛋白 |
研究概要 |
前年度に引き続き、APPのダイマー化に着目し、Aβの産生に影響を与える因子を検討した。 アルツハイマー病の脳の病理組織では、アミロイド沈着部位に高濃度の銅も蓄積していることは、すでに知られている。APPは細胞外、及びAβ配列内に銅の結合もチーフを持っていることから、銅がAPPのダイマー化を変化させた結果、Aβ産生に影響を与えるという仮説の下に実験を行った。APPを発現する細胞に銅を処置し、APPのダイマー化を免疫沈降法及び細胞免疫染色法で検討したところ、処置した銅の用量依存的にAPPのダイマーが増加することが示された。その銅の効果は銅のキレート剤であるペニシラミン投与によって消失した。 また、ELISAによる測定の結果、銅処置は細胞外に放出されるAβの量を増大させることが示された。 これらの結果から、銅はAPPのダイマー化の促進を介して、細胞外に放出されるアミロイドを増加させる可能性が初めて示された。この研究成果は近々出版されるNeuroscience Lettersに掲載される見込みである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究計画は、APPの膜内への挿入状況に応じて、APPの切断が変化を受け、結果細胞毒性のあるアミロイド産生が影響を受ける事、またそれに関与する脳内の因子を明らかにしていくことが目的である。さらに、得られた知見に応じて毒性の強いAβの産生を抑制する方法を検討していく。 現在までの研究で、APPが膜内でダイマーを形成することが、Aβの産生量や毒性の強いAβの産生比に大きな影響を与える事が明らかとなった。APPのダイマーを簡便に検出する方法として、これまでにスプリットルシフェラーゼ法という新しい手法を応用し、その研究成果はすでにJ Neurochemistryに報告した。 さらにAPPのダイマー化を調節する脳内因子について、微量金属である銅を候補にあげ、銅がAPPダイマー化促進に影響を与える事、Aβの産生も調節する事を明らかにした。 以上の研究成果は、銅がアミロイド産生を調節する上で重要なターゲットとなり得ることを示唆するものであり、昨年までの研究成果を順調に発展させた結果であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後はモデルマウス(APP過剰発現マウス)などを用いて、APPのダイマー化をターゲットとした治療介入が、アルツハイマー病の病理学的特徴である老人斑の沈着や、認知機能などに与える影響を検討していきたいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究の遂行に必要な機材はすべて揃っているため、研究費はすべてを細胞培養用品(培地、ピペットなど)や、抗体などの消耗品に宛てる予定である。前年度末に行う予定であった研究の一部を本年度に行う予定に延期したため、一部研究費の繰り越しをおこなった。
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