研究課題
申請者らは、アミロイド前駆体蛋白質(APP)の膜内への挿入状態を変化させ、アミロイドβの切り出しに影響する因子として、APPのダイマー化に着目した。APPのダイマー化の度合いを簡単に定量するために、新たにスプリットルシフェラーゼ法を利用したアッセイ系を確立した。N-カドヘリンによる細胞接着がAPPのダイマー化に与える影響を解析した結果、N-カドヘリンによってAPPのダイマー化が促進され、特に40アミノ酸からなるアミロイドβペプチドの産生を促進することが示された。本研究は、APPのダイマー化を調整する細胞内因子を初めて示したものであり、成果を欧文誌に報告した。平成24年度、25年度には、Aβの産生に影響を与える脳内因子を検討した。 アルツハイマー病の脳の病理組織では、アミロイド沈着部位に高濃度の銅も蓄積していることは、すでに知られている。APPは細胞外、及びAβ配列内に銅の結合モチーフを持っていることから、銅がAPPのダイマー化を変化させた結果、Aβ産生に影響を与えるという 仮説の下に実験を行った。APPを発現する細胞に銅を処置し、APPのダイマー化を免疫沈降法及び細胞免疫染色法で検討したところ、処置した銅の用量依存的にAPPのダイマーが増加することが示された。その銅の効果は銅のキレート剤であるペニシラミン投与によって 消失した。また、ELISAによる測定の結果、銅処置は細胞外に放出されるAβの量を増大させることが示された。これらの結果から、銅はAPPのダイマー化の促進を介して、細胞外に放出されるアミロイドを増加させる可能性が初めて示された。この成果は欧文誌に報告した。これらの発見は加齢に伴いAPP代謝がアミロイド産生に傾くことを予防する方策を明らかにすると言う意味で有意義な研究成果であった。
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Neurosci Lett
巻: 547 ページ: 10-15