研究課題/領域番号 |
23591244
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
奥野 龍禎 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00464248)
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研究分担者 |
中辻 裕司 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (20332744)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ALS / ミクログリア / GM-CSF / M1/M2 / セマフォリン |
研究概要 |
ミクログリアは活性化を受けると、その環境によって神経障害性を持つM1タイプか、神経保護作用を持つM2タイプに分化することが知られている。我々は、以前よりCD40L、Sema4D及びSema7AがM1ミクログリアの活性化に重要であることを明らかにしてきたが、最近ALSモデルマウスの脊髄でのGM-CSFの発現亢進が、M1ミクログリアを活性化させ、運動ニューロン障害を悪化させている可能性を見いだした。多発性硬化症のモデル動物を用いた実験系では、M1ミクログリアの活性化を阻害する薬剤を投与することにより、臨床症状が改善することが示されている。神経変性疾患であるALSにおいても、同様にM1/M2バランスをM2タイプにシフトさせることにより神経変性が抑制可能か明らかにするため、当施設動物舎でALSモデルマウスを準備し、今後M1ミクログリアの活性化を阻害するGM-CSF阻害薬の投与を行い、対照マウスと発症時期、寿命及び罹病期間を比較する予定である。今年度、我々はCD40ligandと同じTNFスーパーファミリーに属するB cell activating factor (BAFF)のALSモデルマウスにおける作用を検討した。最初にBAFF受容体(BAFF-R)がALSモデルマウスの脊髄運動神経に特異的に発現することを見出した。さらにBAFF-R欠損マウス(BAFFR-/-)とALSモデルマウスを交配させてBAFFシグナルを欠損させる事により、ALSにおける神経変性が著明に加速するという知見を得た。ミクログリアやアストロサイトの活性化はBAFFR-/-ALSモデルマウスとBAFFR+/+ ALSモデルマウスで同様であった。したがってBAFFシグナルは神経細胞に直接保護的に作用することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初GM-CSF阻害抗体を使用する予定であったが、ハイブリドーマが入手困難であったため、低分子化合物経口投与によるGM-CSFの下流のシグナル阻害を予定している。低分子化合物は既に入手しマウスに投与を開始している。
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今後の研究の推進方策 |
マウスの麻痺症状の評価は、臨床症状、金網落下試験及び体重測定により行う。更に運動ニューロン障害の客観的評価のために、脊髄及び前根の組織標本を作成し、Nissl染色及びトイジンブルー染色を行い、それぞれ運動ニューロン数及び軸索数の計測を行う。実際にミクログリアのM1活性化が抑制され、M2活性化が起こっているかどうかは、脊髄組織の免疫染色、ウエスタンブロット、及び半定量的PCRを行い、抗体投与群とコントロール群で、M1関連分子(iNOS, TNF-α, IL-1b)及びM2関連分子(Ym1, Fizz1, Arginase-1, IGF-1)の発現を検討することによって行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
脊髄組織の免疫染色、ウエスタンブロットを行う目的で抗体などの試薬を購入予定である。また脊髄におけるmRNA発現の検討のためcDNA合成キットやプライマーの購入を予定している。
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