研究課題
本年度も引き続き、遺伝性骨格筋疾患、特に骨格筋チャネル異常症および筋強直性ジストロフィーについて研究を行った。骨格筋チャネル病が疑われるものの変異が同定されていない検体について、イントロン領域の変異によるスプライシング異常の観点から検討したが、疾患との関連性については明らかにできなかった。しかしながら、次世代シークエンサによる網羅的解析により、骨格筋チャネル病の原因としてはこれまで知られていなかった、イオンチャネルの遺伝子に変異を同定した。さらにそのチャネル機能についてアフリカツメガエル卵母細胞発現系で検討している(名古屋大 大野欽司教授、大阪大 岡村康司教授との共同研究)。筋強直性ジストロフィーについては、昨年度までに見出した心筋型Naチャネルのスプライシング変異チャネルについては、培養細胞に発現させたチャネルを用い、パッチクランプ法による機能解析を終えた。この計測結果を用い、心伝導系のシミュレーション研究を行い、心臓伝導障害に関与することが示された(生理学研究所 井本敬二教授、滋賀医科大学循環器内科 伊藤英樹博士などとの共同研究)。いっぽう、このmRNAスプライシング異常の分子機序については、MBNLが関与する可能性が示唆された(フランスIGBMC、Charlet-Berguerand博士との共同研究)。
1: 当初の計画以上に進展している
当初計画の3年間の予定の大半を、2年目の平成24年度に終えることができ、予定以上の研究の進展が得られた。また、新たな骨格筋チャネル病の原因と思われる遺伝子変異が同定されるという、想定外の成果も得られたことは特筆できる。
本年度骨格筋チャネル病の原因としてはこれまで知られていなかった、イオンチャネルの遺伝子に変異を同定した。次年度はそのチャネルについてアフリカツメガエル卵母細胞発現系での機能解析を終了させる。筋強直性ジストロフィーの心筋型Naチャネルのスプライシング異常については、引き続き、東京大学石浦教授や理化学研究所の紀博士、フランスIGBMCのCharlet-Berguerand博士などと共同研究を行い、分子機序を解明する。
平成23年度からパッチクランプデータ収集用のAD/DAコンバーターおよびコンピューターが経年変化のため動作不良が時々生じている。平成24年度は、コンピューターが動作不能となったものの研究室内の代替で何とか対応した。しかしながら、25年度中にAD/DAコンバーターの買い替えが必要になる可能性が高い。そのため本年度も本研究費からの消耗品の支出を極力控えることとした。次年度AD/DAコンバーターが動作不能になる様であれば購入し、研究継続に支障が出ないようにする予定である。その他、分子遺伝・生物学的実験に関わる消耗品、人件費、情報収集・成果発表のための旅費を中心に使用する。
すべて 2013 2012
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (8件) (うち招待講演 2件)
臨床神経学
巻: 53 ページ: 316-319
脳21
巻: 16 ページ: 印刷中
医学のあゆみ
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
Neurosci Lett.
巻: 519 ページ: 67-72
10.1016/j.neulet.2012.05.023. Epub 2012 May 14.
Neuron
巻: 75 ページ: 467-450
10.1016/j.neuron.2012.05.029.
巻: 52 ページ: 1393-1396
10.5692/clinicalneurol.52.1393