研究概要 |
重症筋無力症(Myasthenia gravis, MG)は、神経筋接合部のシナプス後膜側に存在するアセチルコリンレセプター(AChR)あるいはMuscle Specific tynosine Kinase (MuSK) に対する自己抗体により発症する自己免疫性疾患である。Lambert-Eaton 筋無力症候群(LEMS)も自己免疫性神経筋接合部疾患であるが、標的抗原は神経終末側のP/Q 型電位依存性カルシウムチャネル(VGCC)で、神経終末からのアセチルコリン遊離障害が病態を形成する。いずれも神経終末からシナプス後膜への伝達障害のために骨格筋の易疲労性・機能低下が前景に現れる疾患である。当施設ではMG・LEMS 患者血清について数百例におよぶ自己抗体のアッセイを行ってきたが、全身型MG の10%および眼筋型MG の50%では抗AChR 抗体と抗MuSK 抗体の双方が陰性、また、LEMS の約15%では抗VGCC 抗体が陰性であった。 本研究では、こうした抗体陰性例(sero-negative MG, sero-negative LEMS)の発症に、未知の抗原が関与しているものと想定し、患者血清中の自己抗体がどういった蛋白抗原を認識しているのかを、筋肉や脊髄、大脳のcDNAライブラリーを蛋白としてファージ表面に発現させる、「ファージディスプレイ法」を用いて解析・同定する。同法の準備にあたって現在、抗原となるファージライブラリの作成、増幅、発現の確認、および試験的な抗体カラムの作成を行い、反応条件の調節を行っている。
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