研究課題/領域番号 |
23591252
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
徳田 隆彦 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (80242692)
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研究分担者 |
水野 敏樹 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (30264782)
中川 正法 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50198040)
渡邊 義久 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50363990)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | α-シヌクレイン / オリゴマー / 神経細胞毒性 / 原子間力顕微鏡 / A30P変異α-シヌクレイン |
研究概要 |
今年度は、交付申請書の研究計画に則って、リコンビナントα-シヌクレイン(Rec-α-syn、野生型α-syn)による安定的なα-synオリゴマー作製方法の確立を第一の目標とした。研究開始前に予想されたとおり、Rec-α-syn溶液を37℃でincubateするだけではα-synオリゴマーは殆ど生成されなかった。そのため、まずはα-synオリゴマーを効率的に作製する条件の検討を行うことにした。最終的に、高濃度(3 mg/mL)のRec-α-syn溶液をスターラーで撹拌しつつ37℃で7日間incubateすることにより、α-syn線維が形成されることを原子間力顕微鏡で確認した。この開始溶液(Rec-α-syn溶液)を様々な希釈倍率で検討したところ、~10倍希釈溶液を同様の方法でincubateすることにより、球状のα-synオリゴマーと考えられる分子を作製することができた。また、家族性パーキンソン病の原因となるA30P変異を有するRec-α-syn(A30P-α-syn)を同様の方法で検討した。A30P-α-synは、原子間力顕微鏡では、オリゴマーは形成するが線維は形成しにくい傾向があった。 さらに上記の方法で作成した野生型α-synオリゴマーおよびA30Pα-synオリゴマーの神経細胞毒性を検討する目的で、マウス海馬由来の初代培養神経細胞の培養液に、これらのα-synオリゴマーおよびα-synモノマーを添加して培養神経細胞に対する神経細胞毒性を検討した。その結果、α-synモノマーの添加では培養神経細胞に明らかな形態的変化は認められなかったが、α-synオリゴマーでは培養神経細胞の胞体の扁平化および神経突起の短縮が観察された。これらの形態学的変化およびMMT assayでの細胞毒性は、野生型α-synオリゴマーとA30Pα-synオリゴマーとの間で有意な差は認めなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究申請の段階では、初年度の計画として、1)α-シヌクレイン(α-syn)オリゴマーの安定的な生成系の確立、2)神経細胞毒性を有するα-synオリゴマーの同定、および3)抗α-synオリゴマー抗体の作製、を主な目標としていたが、1)のα-synオリゴマーの安定的な作製が予想していたよりも難しく、その条件設定に想定以上の時間を費やした。その時間的な遅れのために、実験計画はα-synオリゴマーの神経細胞毒性の確認までは遂行することができたが、そのような神経細胞毒性α-synオリゴマーに対する抗体作製までは至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、交付申請時の研究計画に則って、以下の研究を遂行する。1)神経細胞毒性α-シヌクレイン(α-syn)オリゴマーの分子同定:前年度までに確立した野生型および変異型(A30P)α-シヌクレイン(α-syn)オリゴマーを培養神経細胞系に添加して、α-synオリゴマーの神経細胞毒性を検討する。またこのような検討から、最も神経細胞毒性の強いα-synオリゴマー分子種の物性(分子量、超微形態など)を明らかにする。2)1)で明らかにした神経細胞毒性α-synオリゴマーに対する特異抗体を作成する。3)1)で得られた結果を基にして、また2)で得られた抗体を用いてヒト脳脊髄液中に存在する神経細胞毒性α-synオリゴマーを同定する。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は、培養細胞系を用いる研究、クロマトグラフィー・western blotting などの蛋白化学的研究及びLC/MS 質量分析計を利用するプロテオミクス的研究を主体とするので、消耗品費として細胞培養・細胞毒性の検討に必要な種々の試薬・蛋白化学用の試薬及び質量分析器用試薬の費用、さらにLC/MS 用のカラム購入費・維持費が必要である。また、その他の消耗品として、各種の抗体(抗α-syn 抗体、抗ニューロシン抗体など)、プロテアーゼ阻害薬、crosslinking 用試薬およびクロマトグラフィー用カラムの購入費が必要であると考える。クロマトグラフィーカラムは、α-syn オリゴマーの物性を検討する際に分子ふるい・イオン交換などのクロマトグラフィーが必要不可欠である。さらに、本研究では、神経細胞毒性を有するα-syn オリゴマーに対するポリクローナルおよびモノクローナル抗体を作成するので、抗体作成を委託する費用が消耗品費として必要である。
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