研究課題/領域番号 |
23591253
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
嶋崎 晴雄 自治医科大学, 医学部, 講師 (30316517)
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研究分担者 |
瀧山 嘉久 山梨大学, 医学工学総合研究部, 教授 (00245052)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 遺伝性痙性対麻痺 / 連鎖解析 / エクソーム解析 / C12orf65 / ミトコンドリアDNA翻訳 |
研究概要 |
両親が従兄弟婚で常染色体劣性遺伝性痙性対麻痺に視神経萎縮と末梢神経障害を伴った同胞例において,インフォームドコンセントを得,患者白血球由来DNAを用いてSNP6.0アレイによる連鎖解析を行った.染色体2,6,12,13の一部分に原因遺伝子と連鎖した部位を同定した.これらの領域内に病的遺伝子コピー数の異常は無かった. 発端者の遺伝子を用いてエクソーム解析を行い,連鎖する領域内に存在する遺伝子変異を検索したところ,第12番染色体の3つの遺伝子に,新規遺伝子変異を同定した.うち2つの遺伝子変異は後に正常多型と判明した.残る1つの遺伝子C12orf65に新規ナンセンス変異をホモ接合体で認めた.同変異は同胞患者には存在したが,正常コントロールには認められなかった.また,原因遺伝子未同定の常染色体劣性遺伝性痙性対麻痺や視神経萎縮を伴うCharcot-Marie-Tooth病75家系のDNAにはC12orf65変異は認められず,同遺伝子変異を持つ家系は多くないと予想された. さらに,患者線維芽細胞を用いてin vitroでのmtDNA翻訳活性を調べた結果、コントロールの約16%程度に低下していた.呼吸鎖複合体I、IVのタンパク量がそれぞれコントロールの約33%、13%に低下しており、呼吸鎖複合体I、III、IVの会合体であるスーパーコンプレックス量もコントロールの約30%に低下していた.タンパク量の減少を反映して、呼吸鎖複合体I、IVの酵素活性もそれぞれコントロールの約29%、約13%に低下していた.(国立精神神経医療センター神経研究所 疾病研究第2部との共同研究) 以上より,今回同定されたC12orf65の遺伝子変異により,ミトコンドリア蛋白生成の翻訳停止機構に異常が生じ,ミトコンドリアの機能不全により神経障害を来すことが推定された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画書に記載した,遺伝子同定を試みる遺伝性痙性対麻痺の2家系のうち,1家系については新規の原因遺伝子変異が同定でき,その機能解析も終了した.もう1家系についても,連鎖解析とエクソーム解析は終了しており,数個の候補遺伝子変異を同定できたため.
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今後の研究の推進方策 |
今後,原因遺伝子と機能解析が終了した家系については,論文発表予定である.また,別の1家系については,候補遺伝子変異が病的なものか検討するため,家系内のco-segregation studyや,可能であれば機能解析なども予定する.
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は,2番目の家系で同定された数個の候補遺伝子の変異が真の病的遺伝子かどうか判定するため,家系内の患者,未発症者や,コントロールの正常者,他の家系の患者に変異があるかどうか多数の遺伝子解析を行う.それに必要な消耗品の研究費がかなり必要になる. 上記実験で,候補遺伝子が病的遺伝子である可能性が高くなった場合は,その機能解析を行うため,正常と変異を持つ遺伝子を培養細胞に発現させてその蛋白の局在変化を調べるなどの実験を行う.そのための消耗品の研究費も必要になる. 翌年度以降は,第3,第4家系での一塩基多型を用いたゲノムワイド連鎖解析や,患者と正常者の全ゲノムまたは全エクソンの塩基配列解析を,文科省「ゲノム支援」と共同して行う予定で,それらに必要な消耗品の費用が必要となる予定である.
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