研究課題/領域番号 |
23591254
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
伊東 大介 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (80286450)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | FUS / TDP-43 / 筋萎縮性側策硬化症 / 前頭側頭葉変性症 / RNA / Ataxin2 |
研究概要 |
筋萎縮性側策硬化症と前頭側頭葉変性症の共通の分子基盤として、RNA結合蛋白であるTDP-43とFUSが同定された. これまでに我々は、TDP-43の新規アイソホーム p35isoを同定し、細胞質への異所性局在とRNA品質管理機構に関与するstress granule(SG)を形成することを見出した.さらに、FUSのC末端に核移行シグナルを同定し、ALS関連変異は核輸送を障害し、やはり細胞質への異所性局在とSGの形成を誘導することを報告した. したがってRNA結合蛋白の細胞質移行とRNA品質管理機構の障害が神経変性の共通のトリガーとなっていることが示唆されている. 本研究では、すでに我々が確立している発現細胞系を用い細胞移行型TDP-43、FUSによる神経変性分子機構を解明する. さらに、細胞移行型TDP-43(p35iso)、FUS(ALS変異型FUS、△C-FUS)のトランスジェニック(Tg)マウスを作成、ALSの神経変性過程を個体レベルで解析し、ALSモデルマウスの樹立と新規の治療戦略の確立を目的とする.これまでに、TDP-43のTgマウスは数多く作成されて、興味深い知見として野生型TDP-43のTgマウスでもALSと酷似した表現型を呈する点にあるがその分子病態は不明である. 変異型FUS の発現、細胞質蓄積はALS/FTLDの分子病態のトリガーとなることが示唆される.本研究で、細胞質移行型FUS (C-FUS)のTgマウスを作成し、in vivoで神経変性を誘導できるかを検討する.平成23年度に 我々は、すでに変異型FUS Tgマウスに関して、複数の系統(ファウンダーマウス)の作成に成功しており、外来遺伝子の発現を大脳おいて認めており、今後、さらなる系統の産出、そして、表現型の解析にとりかかれるものと予想している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに、複数のファウンダーマウスを同定しており研究計画通り順調に進んでる。一方、Aim1、2にかんして、RNA結合蛋白Ataxin2のcDNAをクリーニングしその発現を確認した。平成23年度には、Ataxin2は、CAGrepeatがあり、PCRの増幅に時間がかかりとくに、各repeat数(1、22、5、79)のataxin2の作成には困難を極めた。次年度以降、RNA結合蛋白Ataxin2とFUSの細胞生物学的解析を開始する。以上より、本研究はおおむね計画通り進展している。
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今後の研究の推進方策 |
FUS Tgマウスが樹立した場合、生化学的(SGマーカー、TDP-43、FUS発現、不溶分画、細胞質分画)、組織学的(H&E、TUNEL染色、TDP-43、FUS、ユビキチン免疫染色)検査を行いその神経変性過程を検討する. 特に、脊髄前角、末梢神経の変性は詳細に行う. 行動解析としては生存曲線を比較するとともに、footprint、rota-rod treadmill (ENV-577, neuroscience, Tokyo)、hanging wire testを評価して運動能力、活動性を定量的に解析する.さらに、次年度はAim1、2の培養細胞でのRNA結合蛋白Ataxin2とFUSの細胞生物学的解析をさらに進展させる。すなわち、RNAの軸索輸送(GFP-MS2にて可視化)を共焦点顕微鏡にてlive imageで観察し、その障害過程を検討する. また、TDP-43、変異型FUS定常発現株にて、Ataxin2のポリグルタミンリピート数とTDP-43、FUSのSG形成過程、細胞質移行の関連を定量的に検討する.
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次年度の研究費の使用計画 |
FUS Tgマウスの飼育費、免疫組織の消耗品が必要である。培養細胞の研究には、高額な培養液、生化学的試薬が必要となる. 特に血清として細胞培養用ウシ胎児血清(FBS)を年間それぞれ10本程度使用しており、その他の試薬を考慮しても多額の研究費が必要である. 23年度は、震災の影響で一時実験がおこなえない時期があったため繰越金が生じた。その他に、当大学共同利用研究室の共焦点顕微鏡使用料、シークエンス、マイクロアレイなどの解析受託費などが必要である。
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