研究課題/領域番号 |
23591254
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
伊東 大介 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (80286450)
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キーワード | FUS / TDP-43 / 筋萎縮性側策硬化症 / 前頭側頭葉変性症 |
研究概要 |
筋萎縮性側策硬化症と前頭側頭葉変性症の共通の分子基盤として、RNA結合蛋白であるTDP-43とFUSが同定された. これまでに我々は、TDP-43の新規アイソホーム p35isoを同定し、細胞質への異所性局在とRNA品質管理機構に関与するstress granule(SG)を形成することを見出した.さらに、FUSのC末端に核移行シグナルを同定し、ALS関連変異は核輸送を障害し、やはり細胞質への異所性局在とSGの形成を誘導することを報告した. したがってRNA結合蛋白の細胞質移行とRNA品質管理機構の障害が神経変性の共通のトリガーとなっていることが示唆されている. 本研究では、すでに我々が確立している発現細胞系を用い筋萎縮性側策硬化症の神経変性分子機構を解明する(Aim1). さらに、FUS(△C-FUS)のトランスジェニック(Tg)マウスを作成、ALSの神経変性過程を個体レベルで解析し、ALSモデルマウスの樹立と新規の治療戦略の確立を目的とする(Aim2). 本年度の実績 Aim1: 筋萎縮性側策硬化症の神経変性分子機構検討では、Ataxin2がTDP-43とFUSの細胞質への異所性局在を増強させ、さらにRNA品質管理機構に関与するstress granule(SG)の形成を阻害することを見出した。本研究は、一流国際誌に掲載された。 Aim2: 変異型FUS Tgマウス(△C-FUS)一ラインの樹立を達成した。ウエスタンブロット、免疫組織にて△C-FUSの強い発現を確認した。現在 BL/6との backcrossを行っている。15週齢の時点では体重減少、行動異常、運動障害、歩行障害などの表現型は認められていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Aim1: 本研究は、一流国際誌(J Biol Chem)に掲載され、十分な成果が得られた。本論文は早々に、国際一流誌Brianの総説に引用されている(Thomas M,et al. Brain. 2013. [Epub ahead of print])。 Aim2: 変異型FUS Tgマウス作成は研究計画通りに進んでるが、15週齢の時点で顕著な表現型が出ていな点は予想外といえる。今後は、組織学的解析に加え、ホモ接合の解析も加える必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
Aim1: 筋萎縮性側策硬化症の神経変性分子機構検討では、神経に同定されたoptineurinやUbiqulin2とTDP-43とFUSとの関連を検討する。とくに、細胞質への異所性局在、stress granule(SG)の形成を分子レベルで解明する。 Aim2: 変異型FUS Tgマウスでは、今後週齢を重ねたのちのfootprint、rota-rod treadmill (ENV-577, neuroscience, Tokyo)、hanging wire testを評価して運動能力、活動性を定量的に解析する. さらに、TDP-43Tgマウス(B6;SJL-Tg(Thy1-TARDBP)4Singh/J購入済)との交配によりダブルtgマウスを作成しその表現型の相加効果を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
FUS Tgマウスの飼育費、免疫組織の消耗品が必要である。 培養細胞の研究には、高額な培養液、生化学的試薬が必要となる. 特に血清として細胞培養用ウシ胎児血清(FBS)を年間それぞれ10本程度使用しており、その他の試薬を考慮しても多額の研究費が必要である.その他に、当大学共同利用研究室の共焦点顕微鏡使用料、シークエンス、マイクロアレイなどの解析受託費などが必要である。
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