研究課題/領域番号 |
23591255
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
鈴木 重明 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (50276242)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 自己抗体 / 電位依存性Kチャネル / 免疫沈降法 / 重症筋無力症 / 炎症性筋疾患 / 信号認識粒子 |
研究概要 |
RNA免疫沈降法は細胞抽出液と患者血清中のIgGを吸着させたプロテインA -セファロース粒子と反応させる。形成された免疫沈降物からRNAをフェノール抽出し、7M 尿素-10%ポリアクリルアミドゲルで泳動のうえ銀染色で検出する。本法において抗signal recognition particle (SRP)抗体が陽性となる筋疾患はanti-SRP myopathyとして筋炎とは異なる炎症性筋疾患と考えるべきであり、1つの疾患概念として確立することができた。Anti-SRP myopathyにはsubacute formとchronic formが存在し、特に後者は若年で発症し、筋力低下と筋萎縮が強く、一見して筋ジストロフィーに類似した臨床像を呈する。 蛋白免疫沈降法は35Sで標識したRDを抗原として、患者血清中のIgGを吸着させたプロテインA -セファロース粒子と反応させる。形成された免疫沈降物は7.5% SDS-ポリアクリルアミドゲルで泳動のうえBAS-5000 (富士写真フィルム)によるオートラジオグラフィーで検出する。抗Kv1.4抗体陽性MGの臨床像は本邦のみならず、NorwayのDr. Romiと共同研究を行い西洋人での抗Kv1.4抗体陽性MGの臨床特徴を明らかにした。 蛋白免疫沈降法ではKv1.4以外にも未同定の自己抗体が複数存在する。95kDのバンドをターゲットとして、抗原蛋白の解析を行った。質量分析によりNCBIデータベースからヒットする蛋白を候補とする新規自己抗体を検索する研究を行い、heat shock proteinの1つであるGrp94を同定することに成功した。本抗体が陽性であるMG患者は陰性例と比べて他の自己免疫疾患を合併する頻度が高率であり、多彩な自己免疫疾患の共通の病態機序と考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題に関する論文業績は英文論文として5篇にのぼり、達成度としては当初の研究計画のとおりおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
抗体Kv1.4抗体の機能を解析する目的で連携研究者の馬場博士が確立したex vivoの系を用いる予定にしている。抗Kv1.4抗体の臨床像についてはさらに抗体測定数を増やす予定である。また抗SRP抗体の研究はanti-SRP myopathyの臨床像をより多数例で検討していくと同時にこれまで行われているRNA免疫沈降法とSRP54を抗原とするELISA法による検出を比較、検討していく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
自己抗体の心機能抑制効果は連携研究者の馬場博士が確立したex vivoの系を用いる (Baba A et al. Therapeutic Apheresis and Dialysis 12: 109)。ニワトリ17日齢卵を用いて、血清を卵の殻に穴をあけて添加し、心エコーによる心収縮の測定を行う。すでに拡張型心筋症の患者血清で多くの症例で実施されており、血液浄化療法の適応を決める臨床的にも重要な実験系として循環器領域で注目されている。抗Kv1.4抗体陽性、陰性と判断した患者血清 (各n = 25)を用いて心機能抑制効果を判定する。心抑制のある症例については、その機序を検証する目的で補体除去あるいはトリプトファン吸着後の血清を使用して変化をみる。またニワトリ心臓におけるKv1.4発現を免疫組織的に観察する。 抗SRP抗体の測定においてはSRP54が抗原エピトープの中心であることが報告されている。SRP54のリコンビナント蛋白はすでに市販されたものがあり、ELISAの抗原として使用可能である。96皿ELISAプレートに抗原をコートし、課題(1)で抗SRP抗体陽性患者血清を用いてプレートリーダーでOD450の吸高度を測定する。コントロールとては抗SRP抗体陰性筋炎、健常人などの血清を用いる。陽性例の血清の濃度から、抗体価測定まで設定し、治療前後の抗体価を比較する。
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