研究課題
重症筋無力症(MG)の15-25%は胸腺腫関連MGであり、傍腫瘍性症候群の側面も有している。胸腺腫関連MGは病態や臨床特徴で、非胸腺腫MGとは異なる側面を有していることから、MGの中で1つの病型として位置づけられている。その免疫学的な特徴は、抗AChR抗体に加えて、横紋筋に対する自己抗体(抗横紋筋抗)が高頻度で検出される点である。抗横紋筋抗体が出現する症例はほぼ全例が抗AChR抗体陽性であり、MGの診断という点では抗横紋筋抗体測定の臨床的意義は低い。しかし抗横紋筋抗体の中で電位依存性Kチャネル(Kv1.4)に対する自己抗体は特定の臨床像、合併症や予後との関連する可能性がある。我々は抗Kv1.4抗体を測定したMG患者650例の中で抗Kv1.4抗体が陽性であった70例の心電図所見を解析した。その中の42例 (60%)でT波以上やQT延長などの心電図異常を認めた。非特異的な心電図変化も含まれるものの、18例では心臓病変による臨床症状を認めた。この中で心エコーや冠動脈造影を行い虚血性心疾患など他の心疾患が除外され、最終的に心筋炎と診断された症例は8例 (1.2%)であった。心筋炎を発症したMG 8例 (M:F = 3:5、平均年齢56歳)は、6例でクリーゼを経験した重症例が多かった。うち4例は心室頻拍、torsades de pointes、突然の房室ブロック・心停止を発症し死亡している。一方、心筋炎を早期に診断し免疫治療を施行できた症例や洞不全症候群に対してペースメーカーにより救命できた症例は救命が可能であった。抗Kv1.4抗体の心筋に対する抑制効果について鶏有精卵(18日齢卵)を用いたex vivo assayの系で検討した。心筋抑制の頻度はKv1.4陰性MGで12%であったが、Kv1.4陽性MGでは44%であった。この実験系による心筋抑制抗体価はKv1.4陽性MGでは高値であり、使用した血清の補体を不活化した場合には心筋抑制効果に変化はなかったが、TR350により免疫吸着をおこなった場合には心筋抑制抗体価は低下した。
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