研究課題/領域番号 |
23591256
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
斉藤 史明 帝京大学, 医学部, 講師 (40286993)
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研究分担者 |
真先 敏弘 帝京科学大学, 医療科学部, 教授 (00585028)
萩原 宏毅 帝京科学大学, 医療科学部, 教授 (80276732)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ニューロパチー / ジストログリカン / 髄鞘形成 / LARGE |
研究概要 |
末梢神経における髄鞘形成には基底膜中のラミニンが重要な役割を果たすことが以前より知られていた。近年、ラミニンとその受容体であるジストログリカンとの相互作用が髄鞘形成に不可欠であるとの知見が集積されつつある。申請者らは最近、糖転移酵素であるLargeを過剰発現させることによりラミニンとジストログリカンの相互作用が著明に亢進しているLargeトランスジェニックマウスを作出した。本研究の目的は、同マウスを用いてラミニンとジストログリカンの相互作用が髄鞘形成に及ぼす影響を詳細に検討すること、さらにラミニン―ジストログリカン相互作用を用いたニューロパチーに対する新たな治療法の可能性を探ることである。平成23年度はLargeトランスジェニックマウスの末梢神経の形態学的検討を行った。前述のように同マウスは糖転移酵素Largeの過剰発現の結果、末梢神経におけるラミニン-ジストログリカンの相互作用が著しく増強している。同マウスの神経根や坐骨神経をトルイジンブルー染色し光学顕微鏡で観察すると共に、特に髄鞘形成や基底膜の形成に関しては電子顕微鏡による観察を行った。この結果トルイジンブルー染色や電顕による観察でLargeトランスジェニックマウスと野生型マウスの間で明らかな形態学的差異は認められなかった。これらの事からラミニン-ジストログリカンの相互作用の増強は生理的な条件下では髄鞘や基底膜の過剰な生成を招く事はないようで、治療への応用を考える際に副作用の有無という観点からはむしろ好ましい結果と考えられる。平成24年度以降に行う末梢神経損傷モデル等を用いた病理的条件下でどのような変化が生じるかが今後の重要なポイントとなる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成23年度はLargeトランスジェニックマウスの末梢神経の形態学的検討を行った。予定ではさらに初代培養細胞を用いたin vitroにおけるシュワン細胞の機能解析や末梢神経損傷モデルを用いた末梢神経再生能の検討を行う予定であったが達成はできなかった。一方で平成24年度以降に予定していた髄鞘形成にかかわるシュワン細胞内のシグナル伝達経路の解析の一環として、Largeトランスジェニックマウスと野生型マウス末梢神経からRNAを抽出しDNAマイクロアレイ解析を既に実施中である。これらの点を総合的に考え、やや遅れていると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度の研究結果から、ラミニン―ジストログリカン相互作用の増強は生理的条件下では明らかな形態学的変化を生じない事が明らかとなった。平成24年度以降は病態モデルにおいてラミニン―ジストログリカン相互作用の増強の効果を試す事となる。病態モデルとしては1)坐骨神経の絞扼による末梢神経損傷モデルを用いた末梢神経再生能の検討と、2)Largeトランスジェニックマウスとニューロパチーモデルマウスとの交配による疾患マウス表現型の解析、が2つの大きな柱となる。これらの実験で何らかの病態改善効果が認められれば、ラミニン―ジストログリカン相互作用の増強はニューロパチーに対する新たな治療法を構築するうえでの有力な分子標的となりうる。一方で、髄鞘形成にかかわるシュワン細胞内のシグナル伝達経路の解析として基底膜―シュワン細胞間のシグナル伝達、なかでもラミニン-ジストログリカン相互作用を介するシグナルの同定を試みる。すなわちDNAマイクロアレイによりLargeトランスジェニックマウスと野生型マウス間で発現が変動している遺伝子を網羅的に解析する。そして実際の発現変動を定量的PCRで確認すると共にそのシグナル経路上に位置する分子のリン酸化の状態を解析し、ラミニン-ジストログリカンシグナルから髄鞘形成へと至る分子メカニズムの解明に迫りたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度は5719円の未使用研究費が生じた。これは平成24年度の研究費と併せて消耗品の費用として使用する予定である。これらには抗体をはじめとする各種試薬やプラスチック用品が含まれる。この他サンプルの輸送費用やDNAマイクロアレイの実験委託費用として使用する予定である。
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