研究課題/領域番号 |
23591256
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
斉藤 史明 帝京大学, 医学部, 准教授 (40286993)
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研究分担者 |
真先 敏弘 帝京科学大学, 公私立大学の部局等, 教授 (00585028)
萩原 宏毅 帝京科学大学, 公私立大学の部局等, 教授 (80276732)
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キーワード | ニューロパチー / ジストログリカン / 髄鞘形成 / LARGE |
研究概要 |
末梢神経における髄鞘形成には基底膜中のラミニンが重要な役割を果たすことが以前より知られていた。近年、ラミニンとその受容体であるジストログリカンとの相互作用が髄鞘形成に不可欠であるとの知見が集積されつつある。申請者らは最近、糖転移酵素であるLargeを過剰発現させることによりラミニンとジストログリカンの相互作用が著明に亢進しているLargeトランスジェニックマウスを作出した。本研究の目的は、同マウスを用いてラミニンとジストログリカンの相互作用が髄鞘形成に及ぼす影響を詳細に検討すること、さらにラミニン―ジストログリカン相互作用を用いたニューロパチーに対する新たな治療法の可能性を探ることである。平成23年度はLargeトランスジェニックマウスの末梢神経の形態学的検討を行った。同マウスの神経根や坐骨神経を光学顕微鏡および電子顕微鏡で観察した結果、髄鞘や基底膜を含めてLargeトランスジェニックマウスと野生型マウスの間で明らかな形態学的差異は認められなかった。平成24年度には末梢神経のラミニン α2鎖の変異により髄鞘形成不全を有するdy2JマウスとLargeトランスジェニックマウスを交配し、Largeの過剰発現によりdy2Jマウスの髄鞘形成に何らかの変化が生じるかどうか検討を行った。光学顕微鏡および電子顕微鏡で観察した結果、 dy2Jマウスの髄鞘形成不全はLargeの過剰発現によっても形態学的に明らかな変化を示さなかった。またLargeトランスジェニックマウスと野生型マウスの末梢神経からRNAを抽出してDNAマイクロアレイ解析を行い有意な発現変動を示す遺伝子群を同定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成23年度はLargeトランスジェニックマウスの末梢神経の形態学的検討を行った。さらに平成24年度には髄鞘形成不全のモデルマウスであるdy2JマウスとLargeトランスジェニックマウスの交配を行い、dy2Jマウスの髄鞘形成不全に変化が生じるかどうかを検討した。またDNAマイクロアレイ解析を行い、Largeトランスジェニックマウスで有意に発現が変動していう遺伝子を同定した。予定ではさらに初代培養細胞を用いたin vitroにおけるシュワン細胞の機能解析を行う予定であったが達成はできなかった。また末梢神経損傷モデルを用いた末梢神経再生能の検討も残された課題である。これらの点を総合的に考えやや遅れていると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度の研究結果から、Largeの過剰発現とそれに伴うジストログリカンのラミニン結合能の亢進は正常な髄鞘形成に大きな影響を及ぼさないこと、また平成24年度の研究結果からはLargeの過剰発現によりラミニン α2鎖の変異の結果髄鞘形成不全を有するdy2Jマウスの髄鞘形成にも、形態学的に明らかな影響が見られないことが明らかとなった。後者の結果はdy2Jマウスにおける髄鞘形成不全が改善する可能性を考えていた申請者らにとっては予想に反する結果であった。この結果に関して一つの推論ではあるが、dy2Jマウスのラミニンα2鎖の変異により同変異蛋白質のジストログリカン結合性が欠如したのではないかと考えている。そうであればいくらLargeによりジストログリカンのラミニン結合能が増強したところで、実際の結合増強作用は発揮されないことになる。最終年度である平成25年度はこれらの点を勘案し、dy2Lマウス以外の病態モデルにおいてラミニン―ジストログリカン相互作用の増強の効果を試す事が必要であろう。具体的には脱髄性ニューロパチーの代表格であるCharcot-Marie-Tooth病のモデルマウスであるPMP22変異マウス(trembler)やP0変異マウス(totterer)との交配により、脱髄の状態に何らかの変化が見られるかどうかの検討と、坐骨神経の絞扼による末梢神経損傷モデルを用いた末梢神経再生能の検討が2つの大きな柱となる。一方でラミニン-ジストログリカン相互作用を介するシグナル経路同定の一環としてDNAマイクロアレイによりLargeトランスジェニックマウスで有意な発現変動を示す遺伝子群を同定した。この結果をを定量的PCRで確認すると共にそのシグナル経路上に位置する分子のリン酸化の状態を解析し、ラミニン-ジストログリカンシグナルの解明に迫りたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は3,560円の未使用研究費が生じた。これは平成25年度の研究費と併せて消耗品の費用として使用する予定である。これらには抗体をはじめとする各種試薬やプラスチック用品が含まれる。この他サンプルの輸送費用やマウスの購入代金に充てる予定である。
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