研究課題/領域番号 |
23591259
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研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
藤原 範子 兵庫医科大学, 医学部, 准教授 (10368532)
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研究分担者 |
鈴木 敬一郎 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (70221322)
江口 裕伸 兵庫医科大学, 医学部, 助教 (60351798)
崎山 晴彦 兵庫医科大学, 医学部, 助教 (30508958)
吉原 大作 兵庫医科大学, 医学部, 助教 (00567266)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ALS / SOD / モノクローナル抗体 |
研究概要 |
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は運動ニューロンが選択的に障害される致死性の神経変性疾患である。生体にとって有害なスーパーオキシドを消去するCu/Zn-スーパーオキシドジスムターゼ(以下SOD1)の遺伝子変異が家族性ALSの原因になることが明らかになっているが、その発症機構は未だ解明されておらず、有効な治療法も見つかっていない。ALSを引き起こす変異SOD1は立体構造が不安定で凝集体を形成しやすいことが数多く報告されている。すなわち、変異SOD1が野性型SOD1とは異なる構造を有していることが示唆される。本研究では微小な構造の違いを検出するために新たにモノクローナル抗体を作製し、精製したリコンビナントタンパク質の野性型(WT)および各変異SOD1(A4V, G37R, H46R, G93A)に対する反応性の違いをELISA法にて検討した。その結果、mAb18B25は変異SOD1によって反応性に違いが認められた。一方、mAb9D3はすべての変異SOD1およびWTにほぼ同程度に反応したが、ELISAプレートへのSOD1のコーティング濃度を低くするとG93Aにのみ強く反応した。エピトープ部分を推定するために、アミノ酸残基を30個ずつ短くしたGST-delSOD1 (1-30, 1-60, 1-90, 1-120, 全長)を大腸菌で発現させて精製し、これらのタンパク質に対するELISAを行った。mAb9D3はGST-SOD1(1-120)とGST-SOD1(全長)に反応し、mAb18B25はGST- SOD1(全長)にのみ反応した。mAb18B25はSOD1の立体構造を認識していると考えられ、変異SOD1の微小構造の解析に利用できると期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
変異SOD1に対する反応性が異なる2つのモノクローナル抗体を作製することができた。ただ、もう少し反応性の違いが大きく出る抗体がほしかったと考えている。さらに、1つのモノクローナル抗体についてはエピトープ部分を推定することができた。もう一つはSOD1の立体構造を認識する可能性が高く、エピトープ部分の推定が難しいかもしれないが、SOD1の立体構造を認識していると考えられ、変異SOD1の微小構造の解析に利用できると期待される。2種類のモノクロナール抗体自体はFBSフリーの培地で培養した細胞からIgGを大量に精製することができたため、結合性や抗体療法の実験に用いることができると期待している。
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今後の研究の推進方策 |
(1) 作製した新規モノクローナル抗体の各変異SOD1に対する結合性の違いをもっと詳細に定量する。さらに、種々の温度やpH、薬剤添加などの条件下で変性させたのちにELISAを行い、変異SOD1と野性型SOD1との微視的な構造変化の違いを解析する。(2) 新規モノクローナル抗体がSOD1の凝集体形成を抑制できるかどうか検討する。変異SOD1および野性型SOD1をアミロイド状の凝集体ができる条件にし、少量のモノクローナル抗体の添加によって、そのアミロイド凝集化が抑制できるかどうかをCongo-RedやチオフラビンTの測定で検討する。(3) 新規モノクローナル抗体の抗体療法および新規mAbのエピトープ部分のペプチドワクチン療法を評価するALSモデルマウスに各モノクローナル抗体のIgGを髄腔内投与し、ALSの発症や進行への影響を検討する。(4) 各ハイブリドーマからmAbの抗原認識部分であるVHとVLの遺伝子をクローニングし、アミノ酸配列を決定する。VHとVLのアミノ酸配列は結晶解析やNMR解析にも必要である。VHとVLを結合させ、ScFv(一本鎖可変部断片)を単離する。ScFvがどの程度の強さでSOD1を認識するのか、ELISA法、ウエスタンブロット法で測定する。各ScFvのVHとVLの組み合わせを変えることで、変異SOD1への結合の強さが変化するかどうかを検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額の研究費が生じた理由は、計画どおりの予算より少ない額で昨年度の研究が達成できたためである。当該研究費は今年度に用いる細胞培養用の血清や培地、イムノプレートやディッシュなどのプラスチック製品などに使用する予定である。さらに、ウエスタンブロットやELISAに用いる二次抗体、抗体のラベル化キット、タンパク質精製用のカラムや担体は生化学実験試薬として購入する。さらに、抗体遺伝子のクローニングのためのオリゴDNAやベクターの購入を行う予定である。
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