研究課題/領域番号 |
23591261
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研究機関 | 川崎医科大学 |
研究代表者 |
大澤 裕 川崎医科大学, 医学部, 講師 (80246511)
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研究分担者 |
砂田 芳秀 川崎医科大学, 医学部, 教授 (00240713)
村上 龍文 川崎医科大学, 医学部, 准教授 (30330591)
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キーワード | 創傷治癒 / 筋ジストロフィー / 再生医療 / 国際情報交換 |
研究概要 |
創傷治癒促進MRLマウスは個体識別のための耳穴が完全閉鎖するという驚くべき表現型から発見された自然変異マウスである。私達は交配によってMRL形質を導入したデュシェンヌ型筋ジストロフィーモデルマウス(MRL/mdx)を作出して、mdxマウスで認められる筋ジストロフィーが改善することを示した。昨年度のMRL/mdxマウス骨格筋の網羅的遺伝子発現解析によって得られた筋再生促進候補遺伝子群の中から、本年度はTGF-βシグナル関連の6つの分子を選択して、in vitro解析を行った。まず、これらの候補分子について、それぞれレトロウイルスベクターを用いて、筋芽細胞へ導入した。この導入筋芽細胞について、低血清による筋管細胞分化アッセイを行って、候補分子を絞り込んだ。筋管細胞融合指数、筋細胞分化マーカーの解析からは、2つの分子に筋分化促進効果が認められた。そこで、それぞれの分子の可溶性リコンビナント蛋白質(Fc融合蛋白質)を、プラスミドベクターを用いてCHO細胞で発現させた。この細胞破砕液からプロテインAカラムを用いてレコンビナント蛋白質の精製に成功した。来年度は、得られたリコンビナント蛋白質について、投与条件を決め、パイロット実験を先行する。ついで、mdxマウスに投与し、筋ジストロフィー病変、筋力低下の改善が得られるかについて検証していく。創傷治癒という観点から、新しい分子を同定し、この分子による筋ジストロフィーの新しい治療法の開発を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
MRL創傷治癒促進マウス骨格筋から得られた筋再生候補遺伝子群のうち、TGF-βシグナルに関連すると予想される6つの分子について、マウスC2C12筋芽細胞系を用いたin vitroアッセイによってスクリーニングを行った。まずこれらの分子のcDNAをPCR法で増幅して、レトロウイルス発現ベクターpMXs-IRES-GFPにクローニングした。このベクターをPLAT-Eパッケージング細胞へトランスフェクションし、ウイルスを抽出し、C2C12マウス筋芽細胞に感染させ候補分子を発現させた。得られた筋芽細胞について、それぞれ低濃度ウマ血清培地単筋芽細胞から多核筋管細胞分化によって評価した。Wright-Giemza染色による筋管細胞融合指数、筋細胞分化マーカーmyosin heavy chain, myogenin, creatine kinaseのウエスタンブロット解析では、コントロールと比較して2つの分子に分化能亢進が確認できた。この絞り込まれた2つの筋再生候補分子について、それぞれの可溶性リコンビナント蛋白質を、pcDNA3.1-Fc発現プラスミドを用いてCHO細胞で発現させた。細胞破砕液からプロテインAカラムを用いてFc融合蛋白質である可溶性リコンビナント蛋白質を精製した。
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今後の研究の推進方策 |
筋再生候補分子のリコンビナント蛋白質を大量精製し、4週齢のデュシェンヌ型筋ジストロフィーモデルmdxマウスの腹腔内に一日一回投与を行う。リコンビナント蛋白質の投与量が研究の成否を決定すると考えられる。まず、低用量から高用量に条件を振って、2週間のパイロット実験を行い体重・握力が最も増加する用量について至適投与量ととらえ、本研究を開始する方針とする。非投与群と比較し、筋ジストロフィーと筋力低下が改善するか否かについて投与前(3週齢)、8週齢、及び16週齢で横隔膜と大腿四頭筋を採取し検討し、筋再生分子であるか否かについて決定する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度研究費は、主に候補分子のリコンビナント蛋白質投与マウスの骨格筋解析のために使用される。骨格筋の免疫組織学染色・ウエスタンブロットに必要な各種抗体、蛍光退色防止剤、スライドガラス等の蛋白質組織生化学試薬、マウスの血清CKなどの血清生化学検査費が中心となる。またリコンビナント蛋白質作成のため細胞培養試薬を計上した。
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